世界自然遺産候補地科学委・奄美WG

IUCNの再調査に備え、環境負荷などモニタリング計画案、地域部会報告を確認・助言した奄美ワーキンググループ=6日、天城町防災センター

IUCN再調査へ「良い担保を」
モニタリング計画案、地域部会報告など確認助言

 【徳之島】「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地科学委員会」の奄美ワーキンググループ(座長・米田健鹿児島大学名誉教授)が6日、天城町防災センターであった。環境省や県側が同推薦地のモニタリング計画案、奄美大島・徳之島両部会行動計画の進捗状況、今秋予定の世界自然保護連合(IUCN)の再現地調査などスケジュール案も確認。委員らからは様々な助言が寄せられた。

 奄美・沖縄の自然遺産登録に向け、各候補地の保全・管理に必要な科学的助言を得るための同科学委員会傘下の有識者らワーキンググループ(WG)。座長の米田氏は、2月に再提出した推薦書に関し「IUCNコメントが、モニタリング計画(案)にどのように反映されたかが注視されると思う。奄美WGとしては最後の機会」と意見を求めた。

 環境省側が、①新たな侵略的外来種の侵入可能性や観光事業による環境負荷などリスク要因②既に定着している侵略的外来種による悪影響や、遺産価値を表す主要な固有種・絶滅危惧種の交通事故、採集圧など「危機要因」―を基本としたモニタリング計画案について説明した。

 県側は環境省・林野庁・各市町村を含む各地域部会の「奄美大島行動計画」と「徳之島行動計画」の各進捗状況を報告。徳之島町林道「山くびり線」(全長約12㌔)などゲート施錠、一般立ち入りへの認定ガイド同行(有料)義務付けに関しては、「賛否両論があるが、自然保護団体は支持している」とも強調した。

 質疑・助言で、委員側からは、絶滅状態にあるマングース(奄美大島)を例に「外来種の再侵入を防ぐバイオセキュリティ対策も必要」。ほか登録後の入り込み増など環境負荷には「クライシス(危機)管理が大事。手遅れで一気に〝危機遺産〟ならないよう安全性のコントロールを」。情報収集では、「生態系は非常に複雑。地元研究者たちの情報も取り上げ、活用する態勢も充実させてほしい」など助言があった。

 世界自然遺産登録に向けたスケジュールは▽今秋=IUCNの現地調査▽12月ごろ=IUCNから質問や追加情報要請▽来年2月ごろ=IUCN要請事項へ回答▽未定=地域部会(第2回)、科学委員会、地域連絡会議の開催▽来年5月ごろ=IUCNから世界遺産委員会などへの評価書送付▽同夏ごろ=世界遺産委員会(開催地・中国)で審議(記載の可否の決定)―も再確認した。

 座長の米田氏は終了後、「IUCNには価値ある自然であることを初回調査で理解いただいたと思う。末永く維持する管理が非常に大事で、(この1年で)2、3回積み上げて良い担保が示せると思う。引き続き地域住民とも連携した実践が大事」と感想を語った。