和光園で親子療養所訪問

和光園で親子療養所訪問

入所者の体験などを熱心に聞いた参加者ら

ハンセン病問題への理解深める
入所者と交流 「生の声聞いて」

 「親子療養所訪問事業」(県くらし保健福祉部健康増進課主催)が8日、奄美市名瀬の国立療養所「奄美和光園」(加納達雄園長)であった。家族連れなどが参加し、施設見学や入所者との交流を実施。入所者に対して積極的に質問するなどし、ハンセン病問題についての理解を深めた。

 親子療養所訪問は県が2002年から毎年実施するもの。ハンセン病問題についての正しい知識の普及啓発、元患者らへの差別・偏見の解消などを目的としている。

 この日は島内外から親子連れ、教職員ら計8組28人が参加。同園の医療社会事業専門員・有川清四郎さんの案内のもと、旧霊安室、旧火葬場、旧納骨堂などを見学した。現在の納骨堂の前では子どもたちが献花し、亡くなった人たちに追悼の意を捧げた。

 入所者との交流を前に加納園長が同園やハンセン病政策の歴史などを講話。加納園長は「入所者の平均年齢が高くなり、直接話を聞けるのは最後の時期に来ている。心の内から出る〝生の声〟を聞いてほしい」と呼び掛けた。6月にハンセン病家族訴訟の原告勝訴にも触れ、「病気の人を偏見の目で見てはいけない。救うべきであり、排除は絶対にしてはいけない」と語った。

 交流は90歳代の入所者女性と有川さんが参加者の質問に答える形で実施。女性は18歳の時に入所したことや、収容時に「生きて帰れるとは思わなかった」と感じたことなどを話した。参加者からは「収容された時の様子」、「家族と離れ離れになったのは寂しくなかったか」などの多くの質問が挙がった。女性が「思い出したくない」などと回答を拒否する場面もあったが、おおむね丁寧に答えた。

 今回初めて親子訪問に参加した、赤木名中2年の川畑璃峯さん(13)は「入所者が強制的に連れてこられ、どこにも行けない状態だったと初めて知った。今後もっと学んでいきたい」。川畑さんの父・健朗さん(52)も「質問を遠慮してしまうこともあったが、こういう機会があって良かったと思う。大人として正しい知識を身に着ける必要がある」と話した。

 奄美和光園は1943年に開設。ピーク時には入所者が約360人いたが、現在は74~102歳の男女23人(男7人、女16人)のみが入所している。入所者の平均年齢は86・4歳。