鹿児島県が配布を始めたヘルプカード
鹿児島県は、外見では分かりにくい障がいのある人や病気の人らが、援助や配慮を必要としていることを知らせるヘルプカードの発行を7月から始めた。発行開始から1カ月以上が経過、奄美市ではこれまでに申請のあった約10人に配布されたが、普及には程遠い状態だ。利用者からは「多くの人がカードの存在を知ることで、いざという時に役立ってくる」と、認知度の向上を求める声が聴かれる。
ヘルプカードは、支援が必要な人が困ったときにカードを提示することで、会話などができなくても「支援を必要とする人」と「支援できる人」を結び付けるためのもの。表に記されている赤字に白い十字とハートのマークは「ヘルプマーク」として、災害時や緊急時などに周囲の援助が得やすくなることを目的に、2012年に東京都が作成、17年には日本工業規格(JIS)の案内用図記号に追加されたことから、全国で普及の動きが広がっている。
県内では、7月1日から県庁や出先機関、市町村などの窓口で希望者に配布している。対象者は義足などを使用している人や内部疾患や難病の人、妊娠初期など外見から援助が必要なことが分かりにくい人。障がい者手帳などは必要なく、県障害福祉課は「日常生活や災害時などに支援が必要と考えられる人など希望すれば誰でも受け取れる。多くの人に利用してほしい」としている。
カードの裏には、住所や氏名、障がいや病気、求めたい支援の内容などを書き込むことができ、身につけることで、周りの人に支援を求めやすくする。
知的障がい者やその家族らで組織する奄美市手をつなぐ育成会(生元為市会長、会員約100人)は、会員らにヘルプカードの周知を図るなどの取り組みを進めている。知的障がいのある子どもの母でもある松浦久美子事務局長は「カードには子どもに障がいがあることと、連絡先を書いている。知り合いの多い場所では、誰かが気づいてくれるが、旅行先などでは、見た目で障がいが分からないのでカードがあれば助かる」と話す一方、「奄美では、まだヘルプカードについて知らない人も多い。まずはカードの存在と意味を多くの人に知ってもらうことが大切」と話す。
奄美市障害福祉課は、「ヘルプカードの認知度を上げるとともに、障がい者にやさしいまちづくりを進めることで、カードを利用したいと思う人を増やしていきたい」としている。