イノシシ食害が深刻化

イノシシ食害で全損被害に遭ったサトウキビほ場(南大島農業共済組合提供)

侵入防止柵 効果に疑問符も
集落エリア出没も多発 徳之島

 【徳之島】徳之島地区では今年に入り、イノシシによるサトウキビ食害など農産物被害が急増している。徳之島、天城両町は5年前までに森林地域との境界部を中心にイノシシ侵入防止柵(総延長約157・3㌔)を設置したが、倒木被害や維持管理不足による効果の後退が指摘されている。さらには、防止柵で山に帰れない個体」が中山間地域のほ場や集落近隣に留まりコロニーを形成しているとの指摘もある。

 南大島農業共済組合本所によると、徳之島地区の今期(2019/20年期)産キビへのイノシシ被害の認定状況28件(うち全損4件)・674㌃(今月19日現在)。早くも前期(18/19)産の全認定実績の21件(17件全損)・628・3㌃を超過。同組合や町行政は、該当外の被害率や未申告分、共済保険未加入分を考慮すると「実体的な被害は軽くこの10倍以上はある」と推測する。

 天城町農政課(林務担当)によると、有害鳥獣対策による町内のイノシシ捕獲数は246匹(前年度150匹)に急増。昨年9月末の台風24号などの影響による餌(シイやドングリなど)の減少も考えられるが、人里での出没・目撃例もさらに増加傾向にあるという。

 イノシシ侵入防止柵(高さ約140㌢、網目10㌢)は国・県補助の鳥獣被害対策事業で徳之島町が11~14年度に97・3㌔、天城町は12~14年度に約90㌔導入。各地域での設置作業やその後の保守管理作業も委ねている。

 この5年間にはイノシシによる柵下部地面の掘削による侵入や、松枯れ倒木による損傷部分の補修遅れ・放置による効果の低減が指摘され始めた。さらには、柵をかいくぐって侵入したイノシシが山に帰れず、「そのまま人里に居ついて、逆効果になっている」との指摘も。同効果の逆行に関しては、徳之島さとうきび生産対策本部事務局や南西糖業㈱原料統括課など関係機関も肯定的に捉えている。

 食害は特に島の北部地区に多い。前期産で全損被害に泣かされた徳之島町金見の農業男性(76)は「キビは毎年30%の被害を受け、全損補償での収穫比較でしか補償がない。パイナップル苗の茎もやられている」と憤慨。県道沿いに、山と集落と仕切る形で巡らされた侵入防止柵は「イノシシが山に帰れずに、水田跡や廃耕地に住みついているのでは」とも指摘する。

 町行政は、侵入防止対策として電気柵やビニール網等補助事業(約50%)=天城町例=など「農家個々の自主努力も必要」と話した。