タンカン産地づくり講演

奄美でのタンカン産地づくりで光センサー選果場の有効活用の必要性を説いた、県農業開発総合センター果樹・花き部の熊本修部長による講演

選果場利用 「栽培技術指導が一番大事」
データ有効活用で樹園地改善

 「奄美たんかん」のブランド化へ高性能光センサー付き選果場が整備されたものの、共販・委託含めて利用が伸びず低迷している。奄振事業で整備された選果場を「宝の持ち腐れ」としないためにも有効活用が産地の課題だが、関係行政機関やJA等が行う栽培技術指導が「一番大事。これがしっかりできることで選果場の利用につながる」との指摘があり、光センサー選果場導入の意義を再確認する姿勢が求められている。

 タンカンなどを栽培している生産者らが出席したJAあまみ大島事業本部果樹部会全体総会で、「奄美地域におけるこれからのタンカン産地づくり」と題し県農業開発総合センター果樹・花き部部長の熊本修さんが講演。この中で選果場の有効活用の在り方を取り上げた。

 まず熊本さんは、「奄美のタンカン産地が一つまとまるためのツール」として光センサー選果機が導入された経緯を説明。「導入のきっかけをもう一度考えて原点に立ち返るべきではないか」と訴えると同時に、光センサー選果のメリットとデメリットを再考。メリットとして▽基準(ランク)設定による品質のいいものの高値販売▽品質保証で消費者の信頼▽樹園地管理システム(選果データを生かし、適地・不適地も判別できる樹園地診断カルテの作成等)活用による的確な栽培管理、デメリットでは▽販売単価の二極分化▽品質基準以下のものの販売のしづらさ・難しさ▽手数料負担の増加―を挙げた。

 熊本さんは「光センサーを導入したから経営が良くなるという考えは大きな誤解」と述べ、光センサー選果からわかってきたタンカン栽培の問題点と改善策を発表。豊作と不作が毎年交互に現れる現象である隔年結果の「弊害がますます顕著」、品質基準をクリアできない「果実が増加傾向」、県内他産地のタンカン栽培も「苦しい状況」と報告。こうした状況を改善(選果データの活用などによって)するには、園芸振興協議会大島支部(県・市町村・JAの関係機関で構成)やJA等が行う栽培技術指導が非常に重要とした。

 熊本さんは、産地としてこれからやるべきことを具体的に提言。選果場維持のための数量の確保=部会としての合意の取り方(一人一人の意識改革が必要、市場や小売り等まで巻き込んだ対応策の検討)▽選果場の有効活用=果実1個単位のビックデータの生かし方(園地単位の栽培管理や適地性等一歩踏み込んだ活用、高品質果実は高く販売、基準以下果実は加工等、基本は栽培管理・隔年結果の防止(防風樹の設置、摘果、適期防除と施肥))―という内容で、選果場を有効活用することで「奄美たんかん」産地づくりが前進することを強調した。