天城町で県立短大・奄美サテライト講座

天城町で県立短大・奄美サテライト講座

延べ約100人が受講した鹿児島県立短大「奄美サテライト講座」天城町会場=8月31日、同町役場

奄美の「磯焼け」要因は「藻食生生物」も
第一人者、野呂学長が講話

  【徳之島】鹿児島県立短期大学(野呂忠秀学長)の公開講座「奄美サテライト講座2019」がこのほど天城町役場であった。藻類など海洋環境研究者で水産学博士でもある野呂学長の講義「海の砂漠化『磯焼け』と海洋のゴミ問題」など2講座を公開。幅広い世代の延べ約100人が受講するなど関心を示した。

 徳之島会場は3年ぶり2回目。まず石井英里子・文学科英文学専攻准教授が「Need some help? 3語で伝わる天城町おもてなし英会話」で講義した。

 野呂学長(元鹿児島大水産学部長・元同大副学長)は「海の砂漠化・磯焼け」現象の究明や、海藻=そう=群落人工造成の基礎研究を推進。藻場造成へのホンダワラ類の組織培養では、幼体に成長させる技術も開発した第一人者。

 講義では、海藻(胞子浮遊で繁殖)と海草=うみくさ=」開花・種子で繁殖)の生物学的な違いや、緑藻ヒトエグサ属ヒトエグサを通称〝アオサ〟とし、食用不適の「緑藻アオサ属」との名称誤用例。奄美大島産ソゾノハナがバレイショのソウカ病に有効であることなども紹介して関心を誘った。

 「磯焼け」によるホンダワラなど大型海藻類の枯死流失、岩肌の白色化、サンゴ藻(石灰藻)のまん延。その弊害に伴うワカメやテングサ、アワビ、トビウオなど資源の減少。海水の富栄養化、環境汚染物質の増加、地球温暖化という地球レベルの生態への影響を指摘。

 そして磯焼け海域における石灰藻とウニ(卵巣実入りの少ない)の異常繁殖。奄美における磯焼け防止策に、「ウニやアイゴのような藻食生生物の捕獲駆除。藻場造成による海藻の育成」を挙げた。

 世界的問題の海洋漂流ごみについては、紫外線や海流で砕けるマイクロプラスチックの影響や、洗顔料などスクラブ製品に含まれるマイクロビーズの問題も提起。まず「知ってもらうこと、話し合うことが問題解決の第一歩になる」とも説いた。

 7日午前10時からは与論町地域福祉センターで「サンゴの白化現象とウミガメによる漁業被害」(野呂学長)、「鹿児島発のデザイン」(北一浩・生活科学科生活科学専攻准教授)の2講義がある。