「諸鈍シバヤ」3年ぶりの披露

演者たちが飾りのついた棒をもって踊りを披露した「スクテングヮ」

コミカルな動きで笑い誘い
「本来の形」に 瀬戸内町諸鈍

 「クガツクンチ」(旧暦の9月9日)の7日、瀬戸内町加計呂麻島・諸鈍集落の大屯=おおちょん=神社で国指定の重要無形民俗文化財「諸鈍シバヤ」があった。昨年、一昨年と台風により中止となったため、今回が実に3年ぶり。見物に訪れた大勢の観客の前で紙面をつけた集落の男衆、諸鈍小中学校の子ども達、計25人がコミカルな動きの劇などを繰り広げ、笑いを誘った。

 「諸鈍シバヤ」は1185年の壇ノ浦の戦いで源氏に敗れた平資盛=すけもり=一行が、島人と交流を深めるために伝えたのが始まりと伝えられる。一時期途絶えた期間があったものの1914年に復活し、76年に国指定の重要無形民俗文化財に登録された。かつて20種目余りあったという演目は、即興的狂言、人形劇を含めて現在11種目が伝承・保存されている。

 2017年には台風接近により初めての中止に。翌18年は行事前に接近した台風24号により集落内に砂が吹き上がり、浸水被害がある家屋も出たことなどから、2年連続の中止を余儀なくされていた。

 今回は行事を「本来の形」に近づけるために、アナウンスでの劇内容などの紹介・説明を省略。諸鈍シバヤ保存会の吉川久也会長(48)は「本来の諸鈍シバヤに戻していきたい」とした一方、「今後は継承のために(同小)校区内の近隣集落に声を掛けて協力を仰ぐ必要もあると思う」とも話した。

 演者らがホラ貝やハトを鳴らし、踊りながらの「ガクヤ(楽屋)入り」で第1部はスタート。同小中の児童生徒も「キンコウ節」などに参加した。「スクテングヮ」では演者が2列に並び、両端に飾りをつけた棒を激しく打ち合い、飾りがひらひらと舞う姿に観客らが見入った。

 第2部はイノシシとの格闘を模した「シシキリ」で幕開け。かまを持って踊る「カマ踊り」や人形劇「タマティユ」など多彩な演目にユーモアスな動きが加わり、会場の笑いを誘っていた。

 吉川会長は「行事は集落にとってなくてはならないもの。(中止になっていた)2年間で先代の唄者がなくなるなど存続も厳しい状況だった。子ども達にもいろいろと協力してもらって、本番を迎えることができて良かった」と語った。