今月15日に龍郷町の山道で確認されたアサギマダラ。翅の状態は良好だった
日本列島を長距離移動するチョウ・アサギマダラの秋の渡り(南下)が全国各地で観察されている。今月中旬には南西諸島にも到達、喜界島では群馬県でマーキング(翅=はね=への標識)されたものが再捕獲された。全国的な傾向として移動のピーク時期が遅く、数も少ないものの翅の状態から台風の影響は受けていないと見られている。
アサギマダラはタテハチョウ科のチョウで、アゲハチョウほどの大きさ。重さは0・5㌘にも満たないほどの軽いチョウで、普通にふわふわと飛んでいるように見えるが、翅へのマーキングが可能なため、春と秋には1千㌔から2千㌔もの旅をすることが確認されている。翅に標識を書いて飛ばし、遠隔地で再捕獲するマーキング調査の愛好者は全国に存在。吸蜜植物のフジバカマの植栽も全国各地で広がっており、それによって報告数が増加、移動調査の精度が向上している。
マーキングを通して生態観察を重ねている研究家の栗田昌裕さん=群馬パース大学学長、医学博士=によると、今年の秋の渡りは旅の出発地である東北地方の調査(福島県で実施)から、いつスタートしたのかわからない状況だったという。「気候変動により夏が遅く、植物の時期も遅かった。アサギマダラの数も全般的に少なく、マーキング数は2千匹弱(昨年は5千匹以上)にとどまり、過去16年間で最低だった。例年、旅の始まりは8月の終わりだが、これも不明確だった」(栗田さん)。
東北地方を出発し、例年9月中旬には群馬県や長野県に移動、10月上旬には愛知県に移動し、その後全国各地へ移動するが、この移動のピークも今年の場合1週間ほど遅いという。数の方も群馬や北陸の富山県は多いものの、それ以外は少ない傾向が現在のところ報告されている。
今年の秋の渡りの時期には、東日本に甚大な被害が及んだ台風19号など複数の台風が本州に接近・上陸した。この台風による影響について栗田さんは「今月13日には愛知県で調査を行ったが、強風などによりダメージを受けているような翅の印象はなかった。他の地域からの報告でもダメージは確認されておらず、台風の影響を受けることなく、ある程度順調に移動しているのがアサギマダラの不思議なところ。気象状況を読んで移動しているのではないか」と指摘する。
奄美での南下報告は、13日に喜界島で、群馬県(利根郡片品村・丸沼)でマーキングされたものが再捕獲されたほか、奄美大島でも龍郷町の長雲峠などでアサギマダラが確認され、まとまった数のマーキングが行われている。奄美で確認されているアサギマダラも翅の状態はよく、台風による影響は見られないという。