徳之島町文化会館「この町で~井之川夏物語り」

徳之島町文化会館「この町で~井之川夏物語り」

原作・脚本・演出、出演者のオール島民で仕上げ、島民ら約千人を感動させた島民劇「この町で」=27日、徳之島町文化会館

 

本番さながらのサプライズ結婚式シーン

 

劇を盛り上げた井之川夏目踊り保存会一行

 

島に生きる夫婦・家族愛…
オール島民手作り劇

 
 【徳之島】徳之島町文化会館25周年事業で約半年前から取り組んだ島民劇『この町で~井之川 夏物語り』の公演が27日午後2時半と同6時半からの昼夜2回あった。原作・脚本・演出から幅広い世代の役者ら出演者、スタッフもオール島民たちによる約2時間の手作り劇。親子の葛藤と家族愛、島社会の人間模様と喜怒哀楽を描き、延べ約千人の観客を感動させた。

 同会館の島民劇企画は2009年の15周記念事業「北緯29度線」、14年の20周年同「島の夫婦」公演に続き5年ぶり。脚本・演出にはプロを招へいしていたが、第3弾の今回はこの経験をもとに実島一仁副館長が原作を提案。脚本・演出も同館職員の大樂大聞=おおらくだいもん=さんが担当。出演者公募に対し小学生から70代まで幅広い世代が参加。3月から舞台稽古をスタートさせていた。

 ストーリーの舞台は同町井之川集落。平凡で穏やかな毎日を送っていた一家が、夏の一大伝統行事「浜下(う)り」の日に都会から数年ぶりに帰省した長女の変容ぶりと、婚約疑惑で混乱に陥る。気持ちのすれ違い、葛藤を超えた夫婦愛。家族愛によるサプライズ結婚式。最愛の祖母への余命宣告。夫婦、家族間の支え合いによる悲しみからの立脚にいたる、島社会の人間模様をミュージカル風の笑いあり、シリアスに涙ありの多彩な演出でつづった。

 井之川夏目踊り保存会をはじめ、徳之島混声合唱団などコーラスグループ、徳之島高校音楽部など団体も含め総勢約120人が出演した。大人たちの迫真の演技に加え、青少年ら若人の自然体の熱演も観客らの心の琴線にふれた。

 母親役を務めたヒロインの福澄亜紀子さん(35)は終演あいさつで「半年間、私たち出演者やスタッフ、合唱団など多くの皆さまの手を借りながら、島の人たちだけで作り上げて来ました。本番を迎えるだけでも精一杯な状態でしたが、多くのお客さんに来ていただき感謝します」とお礼を述べた。

 観客の1人、同町亀徳の旅館業常枝秀市さん(71)は「全員が島の方ということで、どんな演技をするのか楽しみにしてきた。正直言ってとても素晴らしく、親子など人間関係がよく緻=ち=密に表現されていた」と感動していた。

 主催者の椛山幸栄館長(64)は「島に住む人たちだけで手作りを、との新たな取り組みだったが、みんなの真面目さと一生懸命さが演技に表れた。お客さまにも支えていただき演じる人、観る人も楽しく盛り上がってくれた。そして島民だけでも出来る自信にもつながったと思う」とふり返った。