小宿町内会 名越左源太フォーラム

報告を行う奄美市教育委員会の久伸博文化財課長

「地域の宝として掘り起こし」
博物館職員ら人柄や功績など報告

 小宿町内会(「名越左源太=なごやさげんた=」顕彰事業実行委員会)(山田良一会長)は17日、奄美市名瀬の小宿小学校体育館で「名越左源太フォーラムIN小宿」を開いた。約150人が参加し、奄美博物館の職員など5人が左源太の人柄や功績と『南島雑話』の概要などを報告。山田会長は「名越左源太に光を当てられた。地域の宝として掘り起こして、活性化につなげていきたい」と今後の顕彰事業に意欲を示した。

 幕末に薩摩藩のお家騒動(高崎崩れ、お由羅騒動)に巻き込まれて遠島され小宿で5年暮らした名越左源太は、当時の奄美の様子を詳細に記録し『南島雑話』としてまとめた。小宿集落では功績を顕彰する動きが出てきたことから、『南島雑話』写本(市指定文化財)を保有する奄美博物館に相談してフォーラム開催が決定したという。

 市教育委員会文化財課の久伸博課長は、「『南島雑話』とその時代背景」を報告。左源太が1820年に誕生し、50年に小宿に流され52年に藩から嶋中絵図書調方の役目を命じられたことや、長男の時成が藩の英国留学生だったことなどが紹介された。

 続いて博物館職員の山下和さんが、「『南島雑話』入門」と題して講話。『南島雑話』が「南島雑記」、「大嶹=だいとう=竊覧=せつらん=」、「南島雑話附録」などの巻をまとめ名付けられたもので、左源太以外の著者として伊藤助左衛門が判明したことなどを説明した。

 高梨修博物館長は、「名越左源太と小宿村の人びと」を報告。藩政期の奄美大島の行政区分である七間切で小宿村の位置を示し、「小宿村で左源太の世話をした島役人が藤由気=とうゆき=と養子・嘉美行=かみゆき=。亀蘇民とは親しく交流し、書簡を交わしていた」。

 博物館職員の平城達哉さんは、「『南島雑話』に描かれた奄美大島の自然」を発表。「アマミノクロウサギが初めて書物に登場したのが『南島雑話』。有用植物が描かれていたり、動植物の特徴が捉えられた挿絵もみられる」と話した。

 その他、小宿住民から80年ほど前の小宿が、小ぎれいで住みやすい集落だったことも報告。集落側から相撲甚句や八月踊りが披露された。

 山田会長は「名越左源太を少しでも知ってもらえたのは良かった。来年は節目の年なので遺徳をしのぶイベントを行いたい」と振り返った。