贈答用需要がある「津之輝」の収穫を開始した元井農園
12月に入り酸切れが進み糖度が上昇した果実
新かんきつ「津之輝=つのかがやき=」の収穫シーズンに入った。奄美市住用町の元井農園では晴天に合わせて8日午後に開始。昨年並みの収量を見込んでおり、気温が低下した12月に入り酸切れが進み糖度が上昇、品質の良さを誇る。年末の収穫で、お歳暮需要に対応できるため安定した注文が島外などから寄せられており、タンカンに近い食味(果肉は柔軟多汁)が人気となっている。
関係機関は栽培地として下場(平場)を中心に推進している中、元井農園も国道沿いの果樹園などに津之輝を植栽(約1㌶、約600本)。経営する元井孝信さんは「なかなか酸切れが進まず、11月26日の時点でも1・35もあったが、12月に入り一気に進み、0・9まで下がっている。酸切れにより糖度が上昇、12月6日には12度まで上昇した。これだけの高糖度のかんきつは、下場では他にない」と語る。
根が浅いため、生産安定には台風被害などを回避できる防風対策(防風垣整備)が欠かせない。防風樹種として関係機関が推奨している「アデク」を元井農園では導入。防風樹は現在では平均4㍍の高さまで成長、津之輝が植栽された園を取り囲むようにして強風から守っている。果実熟期前には裂果の発生、ヤガ(夜蛾)対策も必要だが、大玉化(2L・3L)や誘虫剤等を含む液体の準備などで対応。被害は1割未満に抑制でき、昨年並みの約2㌧の収量を見込む。
収穫期間は1週間程度を見込んでおり、JAへの出荷のほか、タンカンで取引がある関東を中心とした顧客に個別販売。元井農園では専用の化粧箱(3㌔箱)で発送しており、主力の2Lサイズなら12個、3Lは10個の果実入り。「贈答用として間違いのない商品との評価があり、注文を受け付けるとすぐに完了となるほど人気がある。1週間ほど予措(果皮の乾燥、腐敗防止)を行ってから出荷している。品質面の向上だけでなく紅も乗ることから12月10日前後が収穫適期ではないか。早出しは絶対に避けてほしい」(元井さん)。11月に入り瀬戸内町で集中的にミカンコミバエの誘殺が続いたが、注文では心配された風評被害はないという。
栽培技術が求められる「難しい作物」とされている津之輝。生産が安定すればタンカンのような需要が期待できるだけに、適した技術の普及が産地づくりの鍵となりそうだ。
津之輝 「清見」に「興津早生」を掛け合わせたかんきつに、「アンコール」を掛け合わせてできた品種。奄美大島では2010年の導入以来、行政による苗木助成もあり栽培面積が増えつつあるが、水分管理が問われる裂果の発生のほか、防風対策など生産の安定が課題となっている。