ハンセン病理解へ岩川さん講演

「ハンセン病問題の現在・過去・未来」と題し、生徒を前に実体験などを語る岩川さん

人権侵害など、実体験語る
奄美高校

 奄美市名瀬の奄美高校(堀之内尚郎校長、413人)で9日、ハンセン病への正しい理解を深める2019年度「ハンセン病問題啓発講演会」が同校体育館で開かれた。講師は、ハンセン病回復者で国立療養所星塚敬愛園自治会長の岩川洋一郎さん(82)で、テーマは「ハンセン病問題の現在・過去・未来」。生徒らは、岩川さんが体験した患者やその家族に対する人権侵害や隔離政策の歴史に耳を傾け、差別や偏見のない社会を考えた。

 岩川さんは、少年期にハンセン病と診断を受け、鹿屋市の同園に入所。現在は同自治会長を務めながら、ハンセン病の啓発活動などに積極的に取り組んでいる。

 講演で岩川さんは、国の療養所入所政策の下行われた収容や終身隔離、不妊手術など当時の状況を報告。〝ハンセン病は非常に感染力が強い〟という誤った認識もあり「社会から遠ざけられた」と感じたこと、壮絶な生活を強いられたことなど、実体験を語った。

 また岩川さんは、患者の家族にも及んだ差別などにも言及し、家族訴訟で国が責任を認めたことについては「非常に意義深い判決。だが、差別が完全に解消した訳ではない」と、まだまだ遠い道のりがあることを強調。生徒たちには、「ハンセン病は完全に治る病気。家族とも話し合って見てほしい」とし、職員や地域との共生が進む同園については「一度来て、目で見て肌で感じてほしい」などと呼び掛けた。

 講演後、2年・森山響さんが生徒を代表し「患者、家族のとても厳しい状況に胸が苦しくなった。貴重な話、次世代に伝えたい」とお礼の言葉。教室に戻った生徒たちは、自らの行動を振り返る「ポートフォリオ」に感想を書き込んだ。