「宇和島と奄美つなぐものに」

愛媛県宇和島市から寄贈されたスブネ

漂着の丸木舟、海を越え愛媛から奄美に
住用・原野農芸博物館

 90年以上前に奄美から愛媛県宇和島市の日振島=ひぶりじま=に流れ着いたとみられる丸木舟(スブネ)がこのほど、奄美市住用町の原野農芸博物館(原野耕三館長)に寄贈された。約600㌔の海を越えて里帰りを果たした舟に、同館の福原凡香学芸員は「よく残していただいた。宇和島と奄美をつなぐものになってほしい」と語った。来年4月には同館で一般公開される予定。

 今回寄贈された丸木舟は、愛媛県宇和島の日振島に漂着し、同島出身の社会教育者の故・森岡天涯氏が地元の図書館に寄贈したものと当時の地元紙に記載される。寄贈を受けた図書館が戦時中に空襲で焼失したことから、資料が少なく、同船漂着の詳細は不明。焼失時、舟は同市内の神社に運ばれていたため、戦禍を免れていた。

 2007年には同市在住の画家・宮川淳一郎さん(78)が丸木舟を引き取り保管。高齢のため移譲先を探していたところ、専門家から同博物館が紹介されたという。同舟は今月13日に海路で奄美に運搬された。

 舟は長さ約5㍍、幅約0・6㍍、高さ約0・4㍍。材質は奄美でも舟材に使われるタブノキと言われているが不明。①船首船尾が切り落としたような平面でV字型・前後の区別がない②前後の内側に縄などを通すための穴を削り出している―など、奄美でかつて使用されていた丸木舟に共通する部分があり、専門家らの調査で「奄美のものではないか」と判断された。

 また、奄美大島に現存する実際に使われていた5艘の丸木舟の中でも最も古い可能性があり、同館は今後展示や保管方法などを検討するとしている。