「平井Red」品種登録

農林水産省からの「平井Red」品種登録証を手にする平井果樹園園主の孝宜さん

着色が早い「平井Red」(手前右側、後方左側が「垂水1号」)=1月4日、平井果樹園内で撮影)

タンカンの早生新品種 農林水産大臣名で証明書

 奄美市名瀬の平井果樹園が品種登録を出願していたタンカンの早生新品種「平井Red(ヒライレッド)」が正式に品種登録され、昨年末、農林水産大臣名で証明書が届いた。収穫時期の前倒しが可能なためタンカン販売期間の拡大が期待でき、早期普及を求める声があるが、新品種の特性維持へ、じっくりと苗木育成に取り組む方針だ。

 登録された品種の「育成者権」者は平井學さん孝宜さん親子。「平井Red」は、現在普及しているタンカン品種「垂水1号」の枝変わり品種。2013年1月、同園で発見された。

 園主の孝宜さんによると、果実の審査を経て18年2月に品種登録を農林水産省に出願。その年の夏に申請が下り、8月14日付官報で公表された。翌19年1月には同省の品種登録を担当する職員が来島し園地を訪れ、果実分析など調査。登録まで1年か2年かかると見込まれていたが、昨年である同年11月末には平井果樹園に対し登録の伺いがあり、登録料振り込みなどの手続きを済ませたところ、12月末に「平井Red」の品種登録証が送付された。孝宜さんは「(登録に向けて)第三者としてデータ収集や分析などに取り組んでいただいた県農業開発総合センター大島支場など関係機関の協力に感謝したい」と語った。

 「垂水1号」と比較した「平井Red」の品種特性として、▽1月中旬には完全に着色することから、着色が早く紅が濃い▽完熟期における糖度は同程度だが、クエン酸切れが2~3週間早く、上場(山間部)なら1月中旬から収穫可能、下場(平場)なら1月上旬からの収穫が可能と推測▽油胞数が多いため果面が滑らかで、黒点病軽減▽果実のじょうのう膜は変わらず、軟らかく食べやすい―などがあり、2月に味わえるタンカンの美味しさを1月で楽しめることになる。減酸が早いため収穫を前倒しできる一方、早生系の課題として糖度の上昇の前倒し(収穫時期が遅いほど高糖度の果実が収穫できる)がある。

 12月の「津之輝」、1月の「平井Red」、2~3月の「垂水1号」と奄美大島産のかんきつが4カ月間も販売できることになるが、平井果樹園では専門業者に依頼している苗木の育成について慎重だ。同園が管理する穂木採集用母樹を活用。「穂木自体が少ないため作られる本数が限られる。遺伝のぶれを無くすためにも時間をかけて、じっくりと苗木を育成していきたい」(孝宜さん)。苗木の多量・早期育成を避けることで、新品種特性の一定化を目指す。「平井Red」と「垂水1号」のすみ分けを可能とするため、補植や混植を禁止(他品種との交配、他産地への流出防止策にも)し、園地も登録制にするなど条件を整えた上で普及を図っていく。