持続可能な観光セミナーには約70人が聴講。3氏の講演を通し、観光のあり方を考えた
「持続可能な観光セミナーⅡ―奄美大島での実践―」(奄美の自然を守る会・奄美せとうち観光協会主催、WWFジャパン共催)が18日、瀬戸内町古仁屋のきゅら島交流館であった。(公財)日本交通公社の中島泰上席主任研究員、中村大学の前嶋了二准教授、WWFジャパンサンゴ礁研究センターの小林俊介センター長の3氏が講演。約70人が聴講し、これからの観光のあり方や、課題について認識を深めた。
セミナーは2018年11月に初開催し、2回目。今回からWWFジャパン共催となった。
中島研究員は沖縄県での事例をもとに、観光地の診断ツールの導入の重要性を主張。▽環境▽住民▽経済▽観光客―の“四つの視点”からの評価を地域が自律的に行い、モニタリングの継続と現場での実践をすることが必要とし、「自分たちで監視することが大切。四つの視点を守り、行政や研究者が地域のサポートをしなければならない」と締めくくった。
前嶋准教授は、「大型開発に頼らない持続可能な観光」と題し講演。人口減の解決策としての観光振興の必要性を訴え、地域の食と食文化を体験・共有できるプログラムの確立などを提案。「奄美にマッチした観光の選択肢は一つではない。奄美全体で、外の人と協力しながら広域で考えていく必要がある」などとした。
小林センター長は、八重山諸島で現在行われている、ルール作りの取り組みを紹介。各地で自主ルールが作られる中、統一のルール策定への課題を挙げた。一方で観光客が増えてからでは対応は容易ではなく、合意形成にも時間を要するため、早めに対策を打つ必要がある点も指摘。「持続可能な観光の実現に向けて、課題を共有する仲間は国内外に多数ある。奄美を持続的に守っていくためには自然環境はもちろん“島らしい”文化環境が基盤となる」とした。
講演後には聴講者からの質問が多く挙がるなどした。奄美の自然を守る会の杉岡秋美代表は「世界自然遺産登録に伴い、観光客が増えるだろうが、どう生かすかは自分で考えることが大切だと感じた」と講演を振り返った。