一村未発表作品を取得へ

一村作品の所得と楠田副会頭(写真左奥)選任を承認した臨時議員総会


取得する「岩の上のイソヒヨドリ(仮題)」=県奄美パーク・田中一村記念美術館提供=

商議所臨時総会 協賛会設置し財源確保
楠田氏、副会頭選任

 奄美大島商工会議所(有村修一会頭)は30日、臨時議員総会を開き、画家・田中一村の未発表作品「岩の上のイソヒヨドリ」(仮題)を取得する議案を承認した。購入経費は約600万円を見込む。2月中旬までに作品取得協賛会を設置し、財源確保など早急に準備を進める体制を固めた。

 作品は、一村が千葉県から奄美に移住したばかりの1959年1月~60年5月の時期に描いたとされる風景画(縦127㌢、横35・5㌢、絹本墨画着色)。昨年、奄美市笠利町の県奄美パーク・田中一村記念美術館で公開された未発表作品の一つで、奄美時代初期の傑作として話題となった。

 同美術館は昨年末、奄美出身の作品所有者(県内在住)から「売却後も地元に残したい」という意向を踏まえ、同会議所側に取得を打診。購入はそれに応じた形だ。同会議所による取得事業は今回初めてと見られる。

 取得額は一村作品を扱う各地の美術館施設学芸員による評価額(600~700万円)を参考に算定。総会では島外流出からの保全や奄美の財産としての取得意義、財源は寄付金や協賛広告で募る方針などを説明し、承認された。

 同会議所は、所有者との売買契約締結に向け取得協賛会の中で購入経費の確保や購入後の税務などを協議。購入手続きを進めていく考え。議員から県予算による購入を問われ、事務局は「予算捻出が困難な状況」として、地元経済界に要請された経緯を明かした。

 そのほか、㈱楠田書店代表取締役の楠田哲久氏(72)の副会頭選任を承認。任期は2022年10月31日まで。承認後、楠田氏は「有村会頭を支える立場で組織運営に尽力したい」とあいさつした。