父親の英勇さんが「永井氷店」で使っていた道具。思い入れのある道具を見つけた長男・嘉一さん
昔、奄美市名瀬塩浜町に「永井氷店」があった。永井氷店は今はない。店主だった永井英勇さん(1932年生まれ、87歳)が元気で氷商売していた頃は、名瀬漁協製氷所で造った大きな角氷を仕入れ、大きなのこぎりでカットし、屋仁川のスナックへ販売するため配達した。スナックのママらは、アイスピックを使って角氷を小さくしてウイスキー、焼酎の水割り用やロック用に使う。昨年12月、長男の永井嘉一さん(56)は、自宅の屋根裏部屋で、英勇さんが現役の頃に使用していた大きなのこぎり3本、氷かぎ(手かぎ)2本、角氷を挟む道具1本を見つけた。一つの時代を示す〝証拠〟の道具であり、家族の思い出の道具でもある。
嘉一さんによると、1999年ごろまで英勇さんが氷店を経営。隣では母親の梶子さん(1935年生まれ、2002年他界)が酒・たばこ・雑貨を扱う「永井商店」を経営。3男1女を育てた。
氷店は、名瀬の金久地区で「永井氷店」、奄美地区で別の「氷店」の2店だけしかなかったという。永井氷店は、ほとんどは屋仁川のスナックに角氷を販売。今の東が丘団地がある地域にあった山の上のホテルに配達したこともあった。
昨年12月、嘉一さんが2階の部屋からはしごを上り、屋根裏部屋を見ると、酒と塩が置かれており、その近くに
のこぎりなど永井氷店で使っていた道具6点があった。のこぎり3本の長さは83~90㌢ぐらい。錆びないようにと保管していたらしく、新聞紙やビニールで包まれていた。氷かぎ2本、角氷を挟む道具1本が一緒に置かれていた。
父親の英勇さんは現在、病気で入院中。嘉一さんも病気で体が不自由になっている。「(道具を見つけたときは)商売道具を大切にしていた親父らしいと思った。思い入れのある道具だ」。嘉一さんは、懐かしそうにその道具に目をやり、つぶやいた。