「北高に入学して最高でした」

高校の卒業証書を手に笑顔の鈴倉さん

鈴倉健太さん 車いす乗りこなし高校通い卒業
島への感謝胸に新生活へ

 鈴倉健太さん(18)=奄美市笠利町笠利=が同市笠利町の県立大島北高校(下高原涼子校長)普通科を卒業し、志學館大学法学部=鹿児島市=に進学する。左片まひと失語症を持ち、車いすを乗りこなして高校に通った。友人に支えられ、「北高に入学して最高でした」と語る。4月からは大学で学び、卒業後は島おこしをしたいと希望する。2日の卒業式を終えた鈴倉さんに話を聞いた。

 野球少年だった鈴倉さんは中学校2年で脳出血を発症した。リハビリを経て車いすでの移動や筆談でのコミュニケーションができるまでに回復した。それでも、高校入学前は自分の身体特性のことでいじめられないか、不安を抱えていたという。しかし北高を見学し、自由でアットホームな校風が自分に合っていると感じ入学を決めた。

 入学すると、級友は分け隔てなく平等に接し、移動の手伝いや授業の準備などで鈴倉さんをサポート。学校行事にも参加し、体育祭では鈴倉さんが車いす走をする特別競技を、友人たちと協力して行った。一番の思い出は3年生の文化祭。演劇で悪役にチャレンジし、会場の笑いを誘った。

 鈴倉さんは、中学校時代から「社長になって島に雇用を創出したい」との思いを持っていた。高校で学ぶうちに、政治分野にも興味を持つようになった。大学では法ビジネスを学び、卒業後は島に帰って起業を希望する。いずれは政界にも進出して地域に貢献したいと、具体的なビジョンを描く。

 鈴倉さんに奄美の良さを聞くと「人の温かさ、自然、伝統文化だと思います」と話した。特に人の温かさについては、脳出血発症時に島内各地の野球仲間が激励してくれたこと、リハビリ中も地域一丸となって支えてくれたことが思い出に残っている。「島の皆さんに、いつもありがとうと感謝の気持ちを伝えたいです」と筆談でつづった。