大島紬の織工の傍ら「ORUHI」を営む中島英世さん
販売しているワンピース。腰の部分に大島紬を使用
「キー、カラー、トントン、
キー、カラトントン、
幼い頃からいつも
耳を澄ませて聞いた、
手織りの機(はた)の音。
心は高鳴り、
足どりは軽くなる。」
=奄美の織りや染めを取り入れた衣服を手掛ける「ORUHI」のショップカードに記された言葉。
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2018年から瀬戸内町古仁屋の「瀬戸内町大島紬協同組合」で技術の習得に励む中島英世=ひでよ=さん(23)は、その活動の傍ら自らのブランド「ORUHI」を立ち上げ、「織る日々の中から生まれるモノとコト」をコンセプトとしてものづくりを行っている。
中島さんは同町古仁屋で生まれ育ち、幼い頃から近所の人が大島紬を織る姿を見ることが多く、自然と「ものづくり」にひかれていったという。高校卒業後は県立短期大学の生活科学学科を専攻。卒業制作では、長年使われずに放置、または処分されてしまっている大島紬の「残糸」に着目し、洋服を制作した。
「そのときに、残糸を使用し反物を織ると思いがけない柄が浮かび上がることに気付いた。この制作を機に、大島紬や奄美に古くからある織りや染めについてもっと知りたいと思った」
卒業後には地元古仁屋へUターンし、同協働組合へ入所。同年の夏に「ORUHI」を立ち上げた。
「組合では先生やベテランの先輩方から多くのことを学んだ。初めて織った大島紬は『十の字』という柄。作業が細かいとは聞いていたけど、ここまで繊細なものとは思わなかった。でも一反織り上げたときは、達成感とともにその奥の深さにさらに興味が湧いた」
同組合の織り指導員・禱=いのり=美喜子さん(53)は「英世さんは一教えて十を知るように、どんどん教えたことを吸収していった。大島紬の織りで学んだことが服作りにも役立ってくれたら」と話していた。
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中島さんは、「奄美に古くからある織りや染め」に関心を持つ。その中には代表的な大島紬も含まれているが、特定の方法というよりも、「手織り」であることを大切に「服の着心地や手触り、シルエットも『手織り』の良さが生かされるものになるよう意識している」という。
「憧れていたものづくりの世界に携われてありがたいし、幸せです。服づくりは独学なので、織りや染めの学びと共に試行錯誤して制作していきたい」と目標を語った。
「ORUHI」の服やアクセサリーの取り扱いは龍郷町戸口の金井工芸、鹿児島市のadu.の2店舗。
問い合わせはインスタグラムのメッセージ(アカウント=@oruhi.bi)、またはメールoruhi.bi@gmail.comへ。