9月6~7日にかけて接近した台風10号では過去最大の警戒が呼び掛けられた
【気象】2020年は23個の台風が発生(29日現在)。このうち奄美地方へは4回接近(速報値)し平年値3・8回と比較し微増。内訳は、台風5号、8~10号の4回が接近し、8月8日~9月1日の間に発生の台風が立て続けに接近する形となった。
この中でも9月1日に発生し6~7日にかけて接近した台風10号は一時、中心気圧が910ヘクトパスカルと勢いを増し、過去最大・特別警報級に匹敵する勢力での直撃が予想。進路はやや東にそれ、勢いは奄美地方手前で急速に減退したが、北部・南部ともに暴風域に巻き込み、喜界島で最大瞬間風速41・2㍍の猛烈な風を観測。奄美群島内では半壊3棟、一部損壊76棟を含む計81棟の住家被害が確認されるなど、大きな爪痕を残した。
また今年は梅雨明けが遅く、平年より21日、昨年より7日遅い7月20日に。太平洋高気圧の張りだしが弱く前線が長期に渡って停滞したことが主な要因と考えられ、統計を開始した1951年以降最も遅く、梅雨入り期間は71日間と過去最長記録を更新した。
この他3月28日夜には、奄美市名瀬や龍郷町などで屋根を吹き飛ばすなどの突風被害が発生。突然の突風に名瀬測候所が職員を気象庁機動調査班として派遣し、竜巻なども視野に調査にあたったが現象の特定には至らなかった。
【事件】7月16日に知名町上平川で寝たきりの母親に暴行して死亡させたとして70歳男性が逮捕。8月17日には奄美市名瀬港町の公園で20歳男性が知人の少年に暴行を加えて死亡させ、傷害致死の容疑で逮捕された。
司法では、龍郷町嘉渡で18年に空き家に侵入して火をつけたとして、放火などの罪に問われた30歳男性に懲役12年の実刑判決が下った。19年1月に奄美市名瀬石橋町のコンビニエンスストアに押し入り、刃物で店員を脅したとして強盗未遂の罪に問われた21歳男性には懲役3年、執行猶予4年の判決。男性は同年9月、同小俣町の民家で高齢女性を刺殺したとして殺人罪でも起訴されている。
【事故】3月13日、和泊町畦布の県道で28歳男性が運転する軽トラックに60歳代男性がはねられ死亡。3月8日には奄美市笠利町和野の市道で破損した車から男性の遺体が発見。警察は交通事故と見て捜査を急いだ。
【火災】8月23日、奄美市名瀬永田町で4棟を全焼する火災が発生。9月12日には、同柳町で鍋の火の消し忘れが原因と考えられる火災で住家など7棟が全焼し、8世帯11人がり災した。この他、1月27日には瀬戸内町加計呂麻島武名で、3月5日には喜界町手久津久で火災があり住家1棟が全焼。焼け跡からは各1人の遺体が発見された。
【海難】8月14日、瀬戸内町加計呂麻島芝の海岸で遊泳していた83歳男性が死亡。同月30日には奄美市笠利町喜瀬でダイビングをしていた男性が減圧症にかかり搬送先の病院で亡くなった。10月8日には、台風14号が接近する最中に運航し、プレジャーヨットが奄美市笠利町沖で乗り揚げる事故もあった。
【航空機逸脱】1月8日、喜界島発奄美行きの日本エアコミューター(JAC)航空機が奄美空港着陸後に滑走路から逸脱するトラブルが発生した。乗客などにけがはなかったが、国土交通省は深刻な航空事故につながりかねないとして「重大インシデント」に認定。運輸安全委員会は事故調査官を現地に派遣し調査にあたった。
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新型コロナウイルスに覆われた2020年だが、災害時の避難所では運営と感染防止の両立に、多くの自治体が苦慮した。台風10号時には感染リスクを抑えながら避難者を受け入れるため、予防対策のチェックリストを作成し運営。新たな危機に対応するため医療機関や消防、海上保安部なども協力して合同訓練に取り組むなど対応が急がれた。
一方、台風10号接近時には感染対策も含めた避難場所として大勢の人がホテルなどを利用した。全国各地では避難所に予想以上の人が殺到し、「定員オーバー」や「分散避難」、「自宅避難」の言葉が飛び交うなど困惑。また、気象庁などでは警報の発令基準の見直しも行われたが、感染対策との兼ね合いもあり、一般への周知・理解が進んでいないとの報告も散見した。
年を追うごとに災害が頻発化・激甚化するなか、命を守る行動は、個人の判断が大きく左右するようになっている。情報化が進み個人が知るための手段は増え、国や県、自治体も周知に努めてはいるが、受け手がその方法やツールを知っているといないのでは行動に大きな差も生じている。
特別警報級での接近も予想された台風10号も、もし「直前で勢力が減退しなければ」「その時新型コロナウイルスが流行していれば」―。いざという時正しく判断するためには、個々が学んで備えなければならないほど災害の脅威が増している。 (青木良貴)
=おわり=