3年近くマングース捕獲ゼロ

行政や関係機関がマングース根絶に向けて協議した

 

2年前倒しで新計画へ 奄美大島防除検討会
環境省

 
 2020年度「奄美大島におけるフイリマングース防除事業検討会」(座長・石井信夫東京女子大学現代教養学部数理学科名誉教授)が15日、奄美市名瀬の奄美文化センター会議室で開かれた。20年度は、わなによる総捕獲数はゼロ。捕獲は18年4月を最後に、ゼロが3年近く継続している。年度末までゼロが続けば2年前倒しで新計画に進むこととし、根絶確認および防除完了に向けた新たな防除実施計画案の検討がなされた。石井座長は「2000年から20年かけてここまで来た。根絶という目標は近づいているので最後まで気を緩めず慎重に進めてほしい」と語った。

 環境省沖縄奄美自然環境事務所の主催で有識者5人の検討委員と環境省、県や市町村の担当者、関係団体など約50人が出席。島内外から多数のWEB参加があった。

 奄美大島では1979年、ハブやネズミの駆除を目的にマングースが奄美市名瀬に約30匹放され、急速に増加拡大。2000年には約1万匹と推測された。アマミノクロウサギなどの希少種等を捕食し、生態系に深刻な影響を及ぼした。

 同省では00年度に奄美大島でのマングース駆除事業を開始。05年度からは「奄美マングースバスターズ」を結成し、外来生物法に基づく防除事業を実施。
13年度からは22年度までの10年計画(第2期奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画)に基づいて、同島からのマングース完全排除を目指して防除を実施してきた。

 20年度12月末までのわな捕獲の結果はゼロ。マングース探索犬による探索状況でも、ほぼ全島に網羅的に設置された422台のセンサーカメラでも、マングースの生息を示す情報は発見されなかった。

 マングース防除事業による在来種の回復状況を把握するためのセンサーカメラ調査では、アマミトゲネズミやオオトラツグミ、アマミヤマシギなどの撮影頻度は前年度を上回っており、堅調に回復。一方、外来種のノネコ、ノヤギに増加傾向が見られ、今後の推移に注意が必要な状況であった。

 防除の進捗が当初想定より早く進んでいることから、年度末まで捕獲ゼロを前提に、20年度をもって第2期計画を2年前倒しで終了し、21年度から新計画に移行する方針に。新計画「根絶確認及び防除完了に向けた奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画(案)」が検討された。

 新計画ではマングースの根絶を慎重に確認するために、わな等によるモニタリングを継続的に実施するとともに、根絶確率算出モデルによる科学的評価を行う。その上で、有識者等による評価を受け、遅くとも25年度末までに根絶宣言をするのが目標。わなが過密なエリアからは徐々に減らしていく。そして過去に得られたデータとこれから蓄積するデータを根絶確率算出モデルに組み込み、評価する。島民からの情報収集も強化するという。

 奄美群島国立公園管理事務所の阿部慎太郎所長は「根絶という目標にまた一歩近づいた。島に住んでいるみんなで根絶を実現したいと思っているので、情報協力をぜひともお願いしたい」と述べた。