「世界自然遺産子どもオンライン講座」

平城講師の「鳴き声クイズ」に取り組む参加者たち

西表と奄美さまざまな交流を

 奄美大島自然保護協議会は23日、子ども向けの普及啓発イベント「世界自然遺産子どもオンライン講座」を行った。約700㌔離れた奄美大島と西表島をオンラインで結び、6会場で19人の小5~中3生が参加。二つの講座を通して世界自然遺産推薦地の西表島と奄美大島の自然を学び、双方向性を生かしてクイズへの参加や活発な質疑応答があった。

 同講座は奄美市名瀬総合支所、同市住用総合支所、大和村防災センター、宇検村役場、瀬戸内町きょら島交流館、龍郷町役場の6会場を結んで実施された。世界自然遺産登録に向けた人材育成と機運醸成が目的。

 講座①「西表島とイリオモテヤマネコを知ろう!」の講師は西表野生生物保護センター竹中康進さん。まず西表島は亜熱帯の森とたくさんの川や滝があり、人口約2400人、約289平方㌔の面積のほとんどが国立公園になっていると紹介。

 イリオモテヤマネコは頭胴長50~60㌢、体重3~5㌔。1965年に見つかり、絶滅危惧ⅠA類に指定された。ヘビや鳥、コウモリ、エビ、魚、カエルなど多様な食性によって生き延びた。竹中さんは「多様な環境に生息する多様な生きものたちに支えられており、周囲の環境を守ることが大事」だと訴えた。

 イリオモテヤマネコにとっての脅威は開発や外来種(ノラネコからのウイルス感染等)などがあるが、一番の脅威は交通事故で、これまでに92件が判明。原因はスピードオーバーが多く、安全運転を呼び掛けた。保全の取り組みとしてモニタリングによる個体識別、交通安全運動、アンダーパス(ヤマネコの通り道をつくる)を島内に123個つくったことなどを紹介。

 以前は同島にもノラネコがたくさんいたが、行政や獣医師、住民ボランティアなどが協力して約400匹を捕獲、島外搬出して新しい飼い主のもとへ。現在はほぼノラネコはいないという。

 竹中さんは「西表と奄美、さまざまな形で交流していこう!」と呼び掛けた。

 講座②「奄美大島の生きものを知ろう!」の講師は奄美市立博物館の平城達哉さん。平城さんはまず5市町村それぞれの自然の特徴と生息する生きものについて紹介。その後、日本の面積の約0・19%しかない同島にたくさんの生きものが生息していることを、例をあげて説明した。

 江戸時代終盤の同島の生きものや文化が詳しくまとめられている『南島雑話』にもキノボリトカゲやアマミノクロウサギ、ハブなど多くの生きものが登場していることを紹介。最後に4択形式でアマミノクロウサギ、アマミイシカワガエルなどの鳴き声クイズを行い、参加者は熱心に取り組んでいた。

 平城さんは世界自然遺産の候補地となっている四つの島(奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島)とそれらの固有種を紹介し、「ぜひ四つの島の生きものについて調べてみて」と呼び掛けた。

 参加していた朝日小5年の岩木蒼平くんは「イリオモテヤマネコはテレビで見て知り、西表島に行ってみたいと思ったので今日参加した。イリオモテヤマネコが昆虫やは虫類などいろいろ食べると知っておもしろいと思った。ルリカケスがいろいろな鳴き声を発するのは初めて知ったし、奄美大島が日本の1%にも満たないことも初めて知って驚いた」と話した。