沿道にもそれぞれのドラマ

チヂンを鳴らしてエールを送る大和村の応援団=奄美中央病院前で

聖火をつなぐ川畑アキラさん(左)と梅津誠さん=AⅰAiひろば前で

聖火リレー応援 拍手や鳴りもの、走者の雄姿にエール

 東京オリンピックの聖火リレーは27日、奄美市に入り、代表のランナー18人が奄美市名瀬の市街地を走った。県実行委員会は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、約200人の警備態勢で臨む中、コースの沿道には世紀の瞬間を間近で見ようと多くの観客が訪れ、拍手や鳴りものなど、走者の雄姿に力いっぱいのエールが送られた。

 奄美中央病院前では、川下光さん(39)、大野日菜子さん(13)の大和村勢がバトン。大和村からは親族や知人が応援団を組んで駆け付け、大野さんの家族らがチヂンを鳴らして力を送った。小学1年生から水泳に打ち込んでいるという大野さんは、クリスマスの日に合格通知を受け、以降は村一番のアスリートに走り方を教わり練習。母・正美さん(51)は「きょうの瞬間を刻み、勇気と希望を胸にこれからも頑張ってほしい」と、祖母・中正子さん(84)と涙した。

 矢之脇町前では、18歳の時に急性骨髄性白血病を患い骨髄移植手術で一命をとりとめた小学校教諭の深美陽市さん(37)=鹿屋市=が「白血病を患う人に勇気」をと、家族や両親らが手を振る中、コースを駆けた。妻・亜希さん(35)は「危ない時期もあったけど、ドナーや周囲、(今年3月まで在住していた)徳之島の人たちに感謝の気持ちを届けてほしい」と応援。宮崎県から来た母・賀津子さん(63)は「本人はいつも前向き。また走れてよかった」と喜んだ。

 ENEOS港町SS前では、喜入大星くん(14)=知名町=が奄美市で病気療養中の祖父母に声援を送ろうと聖火を手に疾走した。スタート前には、次走者のミュージシャン・川畑アキラさん(52)=与論町=と考えた決め台詞「あなたのハートにマイレボリューション…」との言葉に、大勢の観客らはえびす顔。見守った母・みちるさん(46)は「一生ものの記念。珍しく緊張していたけど、みんなを笑顔にできたのもよかったと思う」と喜んだ。

 市職員らはランナー通過の数時間前から一定間隔で警備スタッフを配置。「距離を保って」と記したプラカードを掲げ、観客には間隔を空けるよう促した。ランナーの通過に合わせては、大勢の観客が一緒に移動する場面も。係員が「並走しないで」と呼び掛ける姿などもあった。

 沿道に訪れた観客からは「奄美で聖火を見られるのも一生に一度」「生きている間に二度と見られないとの思いもあった」などの声も聞かれた。矢之脇町の榊雄二さん(70)は「中学1年生の時の(1964年)五輪では奄美の聖火リレーはなく、テレビを見ようとこっそりと理科室に忍び込んで、先生に見つかり怒られたのはいい思い出。(聖火リレーを前に)胸が熱くなり感激でドキドキしている」。走者を見守る沿道でも、それぞれのドラマが駆け抜けた。