クラスター発生、増え続ける感染

奄美市と龍郷町が実施したワクチンセンターでの集団接種シミュレーション(4月14日)

ワクチン接種切り札となるか
新型コロナ

 東京や大阪などに3度目となる「緊急事態宣言」が出されるなど、全国的に新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。奄美でも4月7日に龍郷町で感染が確認されて以降、約1カ月間で53人の感染が確認されている。一方で、感染を抑える切り札として期待されるワクチン接種も始まった。新型コロナ対策の現状を取材した。

 最も感染者が多い奄美大島では、宇検村を除く4市町村で計44人が感染。奄美市では 4月29日、8人が感染するクラスターが発生、その後24人まで増えた。1日には、知名町でも7人が感染するクラスターが発生。県や自治体が警戒を呼び掛けているが、感染者は増えるばかり。大型連休を控えた島では、緊急事態宣言により、観光客の減少など大きな痛手となっているところに、追い打ちをかける形となった。

 奄美市でクラスターが発生した前日の28日には、朝山毅市長自ら、同市最大の歓楽街「屋仁川通り」に出向き、大型連休期間中の感染対策徹底を呼び掛けたばかりだった。市内の飲食店約90店舗が加盟する奄美市社交飲食業組合の伊東隆吉理事長は「4月に入り若い人たちの感染が続いていたので心配していたが、まさかクラスターが出るとは、残念で仕方ない」と肩を落とす。

 同組合では、各店舗に換気や消毒の徹底、アクリル板設置などの感染対策を呼び掛けており、多くの店舗がそれぞれに感染対策を行っていたが、結果的に、感染を防ぐことができなかった。伊東理事長は「どこまで対策をすればよいのか、(ウイルスは)目に見えないだけに難しい。今後さらに感染が広がらないよう、これまで以上に感染対策を徹底するしかない」と話した。

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 そんな中、大和村では県内で最も早く4月12日からワクチン接種がスタート。1日には、与論町でも始まり、奄美市と龍郷町も3日にスタートする。5月中に群島内すべての自治体で高齢者(65歳以上)を対象としたワクチン接種が始まる。

 奄美市と龍郷町が合同で行う集団接種は、奄美市名瀬長浜町の奄美ワクチンセンター(奄美文化センター)で行われる。1回目の接種予定者は3533人(奄美市2933人、龍郷町600人)で、対象者の約2割程度。集団免疫の獲得に必要とされる7割以上の接種には至っていない。

 奄美市新型コロナワクチン接種推進室によると、同センターでは医師2人と看護師14人、自治体職員7人体制で、1日240人の接種を計画している。30分間で20人に接種する必要があるが、同推進室は「できるだけスムーズに接種できるよう、様々なトラブルを想定しながら準備を進めている」とした。

 ワクチンセンターでの体制とともに、予約受付の体制強化も求められる。受付が始まった4月19日には、8回線用意されたコールセンターの電話が一日中鳴り続けた。電話がつながらず、市役所窓口を直接訪れる人もいた。

 同推進室は「予想をはるかに上回る希望者に対応できなかった。今後は、さらに回線や職員数を増やしたい」とし、予約した人の約3分の2が、ウエブなどのネット利用だったことから、「家族などでネット予約を支援できる人は、そちらを利用してもらいたい」と呼び掛けている。

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 政府は6月末までに、高齢者全員が1人2回接種できるワクチンの配分を終える方針を示しているが、全員の接種を終えるのは秋ごろになる自治体もあるようだ。

 奄美市では、6月14日から開始する第二弾の集団接種以降、さらに医師や看護師を増員し、1日の接種人数を現状の1・5倍の360人に増やすことも検討している。一方で、体制強化に必要な看護師などの確保はまだ不十分と言い、「島内の医療機関や医師会、看護師資格を有する人たちに協力をお願いしたい」としている。

 県内でも変異株の感染者が増えており、予断を許さない状況が続いている。脆弱な医療体制のなか、島民一人ひとりが感染対策を徹底し、早急なワクチン接種が行える体制づくりが求められている。(赤井孝和)