「身近で」奄美出身者新型コロナ感染ルポ(1)

迎えに来た療養者専用の車に乗り込む

息子から「濃厚接触者」へ

 先月の21日。神奈川県に在住する奄美出身者(62)から電話が入った。「息子がコロナになった。私も濃厚接触者で陽性になるかもしれない。島ではクラスター(感染者集団)が発生したりしているから、私の体験が役立つかもしれない。ルポを用意するので、よろしく」との連絡だった。案の定、陽性に。新型コロナウイルスに感染した奄美出身者のルポを届ける。

 【4月21日】仕事から帰宅した息子が体調不良を訴えた。「4・5日前に職場からコロナに感染した人が発生した」と息子が話していたことを思い出した。職場は品川にあり、およそ200人の人間が同じフロアの部屋で働いていると聞いた。何カ月も無職状態だった息子が、やっとありつけた職場だった。前に働いていた職場が、いわゆる「ブラック」企業だった。何とか3年間は働いたが、とうとう体調を崩してしまい退職した。

 職を探すにも、コロナのせいでなかなか見つからない。そんな中、やっと見つけたのが、政府の助成制度の相談を受けるコールセンターだった。その中の何人かがコロナに感染した。名前も性別さえも明かされないで感染者が出たことのみ知らされた。「とうとう、身近な人間の周りにコロナの感染者が出たか」。話を聞いて真っ先に思ったことだった。「今より具合が悪くなるようだったら病院に行く」と 話すと、息子はそのまま2階の自分の部屋に上がっていった。

 【4月22日】翌日、息子から家族のLINEに「陽性でした」と投稿があり、「これからどのようにすればいいのか、保健所からの連絡を待ちます」との内容の文書が続く。同居している両親は「濃厚接触者」になるので、「保健所から連絡がいきます」ともつづられていた。

 私の普段の仕事は、建物の検査だ。コロナに感染しないように、とても気をつかって業務を行っている。マスクは当たり前で、移動も、電車やバスなどの公共交通機関はなるべく利用せず、車で移動。客の家に行く際は、使い捨てのスリッパに携帯アルコールスプレー、手には手術用のゴム手袋着用で行う。

 万が一、コロナ感染していても、客にうつしてはならないとの気概で仕事をしているし、また、うつらないようにしているが、どんなに気を付けていても今回のように家族にコロナ感染者が出てしまっては、ほぼ防ぎようがない。病院でPCR検査を受けて「陽性」だった場合、病院から区の保健所に連絡がいくシステムになっている。病院から戻ってきた息子と話をしている最中に、知らない番号から携帯電話に着信が入った。「多摩区役所地域みまもり支援センター衛生課」からだった。

 息子がコロナに感染したという報告と、「濃厚接触者」になった両親と息子が接触しないで済む家庭環境かどうかの聞き取りだった。
息子の症状が軽いことと、家族に感染させるリスクを軽減させるために「ホテル療養」になることを告げられた。「濃厚接種者」になった私のメールアドレスに「多摩区役所地域みまもり支援センター衛生課」の担当者から、これからの処遇について案内が届いた。メールには☆「【川崎市版】新型コロナウイルス感染症と診断された方へ」☆「自宅、宿泊施設療養のしおり第十四版」が添付されていた。ファイル名にある「第十四版」の数字から担当部署の混乱ぶりが読み取れた。