ミカンコミバエと誘殺のため設置されているトラップ
果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの誘殺数は、枕崎市での確認により今年度県内で計10匹となった。これまで3市で確認されているが、いずれも県本土の東シナ海側(甑島を含む)で、ミバエ類が発生している「中国の南部地域からの飛来ではないか」との見方が出ている。現在のところ奄美での誘殺はないが、侵入のリスクを想定し常に危機意識が求められそう。
県経営技術課のまとめによると、トラップ調査(雄成虫の誘引剤を設置し、雄の生息を確認するための調査)の結果、今年度誘殺数の地区別内訳は、薩摩川内市(甑島)4匹、いちき串木野市(串木野)5匹、枕崎市1匹。初誘殺日は薩摩川内市5月19日、いちき串木野市同25日、枕崎市6月14日。
世代交代、定着につながる雌成虫の生息を確認するため、幼虫や蛹=さなぎ=の寄生の有無を確認する寄主果実調査は、初動対応として薩摩川内市、いちき串木野市で進められている。枕崎市は近く予定。調査果実数の合計をみると、薩摩川内市1351、いちき串木野市2066の果実を採取し調べたところ、「寄生なし」となった。
今年度の九州・沖縄の誘殺状況(農林水産省植物防疫所まとめ)をみると、沖縄県(いずれも石垣市)5匹に対し、鹿児島県以外では熊本県(いずれも天草市)19匹、長崎県12匹(長崎市11匹、対馬市1匹)となっている。誘殺数が多い九州の状況は、鹿児島県を含めて中国大陸に近い東シナ海側での誘殺。関係機関は「水稲害虫と同じような状況ではないか。ミカンコミバエは中国南部でも発生しており、それが北上し、中国大陸全体で問題となっているようだ。九州での誘殺は梅雨前線や気流により、中国からの飛来の可能性がある」と指摘する。これまでは発生国の台湾、フィリピンからの飛来が警戒されてきたが、現在のところ奄美での誘殺はゼロで、沖縄県の確認数も九州各県より少ない状況にある。
なお、奄美でのトラップ調査は5月31日から毎週行われており、現在のところ誘殺の報告はない。タンカン栽培に取り組むJAあまみ大島事業本部果樹部会長・大海昌平さんは「ミカンコミバエはこれまで奄美・沖縄の南西諸島の問題とされてきたが、昨年あたりから県本土さらに九州で広く確認されるようになった。日本全体の問題と認識すべきではないか。奄美では現在のところ誘殺が確認されてないが、中国からの飛来を含めていつ確認されるか分からないだけに、常に危機意識を持つ必要がある」と警戒を呼びかけている。