昆虫トラップによるクワガタなど昆虫の大量採集や、IUCN指摘のロードキル問題などを協議(徳之島地区)=9日、天城町役場
昆虫採取トラップ(バナナトラップ)=今月5日、伊仙町内(徳之島虹の会提供)
【徳之島】奄美群島希少野生生物保護対策協議会(会長・宮澤泰子県自然保護課長)の徳之島地区対策協議が9日、天城町役場であった。「規制対象外の種」「規制区域外」に乗じ大量採集され、生態系や景観に悪影響を及ぼしている可能性が指摘される昆虫採集用トラップ(わな)設置について、地元の自然保護関係者は「条例化規制」も提案。ロードキル(交通事故死)防止は既存の形態に頼らない対策を情報共有して進める。
昆虫採集用トラップの問題は、世界自然遺産登録直前の駆け込み的に多くの昆虫採取者らが奄美大島や徳之島に来島。いわゆる「バナナトラップ」などを国立公園など規制対象外に大量に設置。種の保存法や希少種条例など指定外の昆虫を無秩序に採集し、関係法令をかいくぐり「生物多様性の島」の資源が大量に持ち出されている懸念。
同関連で希少生物の保護監視パトロールを続けている県希少野生動植物保護推進員と徳之島自然保護協議会の関係者は「トラップ採集の目的は(島北部の)国立公園や世界自然遺産登録予定地域だったが、伊仙町内の農道や林道が狙われ、農地にも侵入している」。巡視中の指導・啓発サイドの「身分の証明。希少種が混じっていないか確認など(採集行為者が)協力する体制づくりも必要」。また「採集業者は一度に100~200個のトラップを設置。トラップ採集自体を禁止する方向で検討すべき」などと提起した。
県自然保護課は「無秩序な採集が続き、景観に悪影響を与え住民感情を損ねるなど問題が続くなら、実態を把握した上で何らかの対応の検討が必要」。身分証明は「腕章」などの作成、トラップ設置に関しては十島村の制定例も挙げた。
環境省(徳之島管理官事務所)によると、同島内でのアマミノクロウサギのロードキルの発生件数は2018年の19匹を過去最多に19年、20年は各16匹を記録。「生息状況が回復傾向にある一方で事故も増加。IUCNもロードキル対策を指摘。関係機関・部局一丸で対策の見直しが必要」。多発区間では「看板の直下でも事故が絶えず、対策を見直す必要がある」と強調。
徳之島町は新たな取り組みとして事故多発区間の路傍や法(のり)面へ飛び出しを防ぐ「防獣ネット」の設置試行。徳之島署は、島北部の多発区間は交通往来が少ないがゆえに速度を上げてしまい「クロウサギなどの発見が遅れてしまう原因になっているのでは」とも提起した。
午後は島内を合同パトロールし、大量に仕掛けられていた昆虫採集トラップの現状などを確認した。