一村美術館「染織作家のまなざし展」

染織作家のまなざし展の出展作家6人

衣をキャンパスに「自然の美」描く
南国と北陸の伝統工芸並ぶ

 奄美市笠利町の県奄美パーク・田中一村記念美術館企画展示室で9日、「加賀友禅・大島紬・花織 染織作家のまなざし展ー奄美」が始まった。展示は、「大島紬」や浮織の一種の「花織」、石川県金沢市を中心に生産されている友禅染が特徴の「加賀友禅」の手法を用いつつ、11人の作家が自由な感性で制作した着物や帯などの作品が約80点並ぶ。初日から3日間は出展作家6人が在廊し、作品紹介などのギャラリートークがある。展示は16日まで。

 工芸染織まなざしの会主催。企画を立ち上げたのは、奄美市の伝統工芸士・越間巽さん(75)と金沢市の加賀友禅作家・中町博志さん(78)。約30年の交流があるという2人は、越間さんが金沢市の商業施設で毎年開催していた大島紬の展示会を通じて出会ったという。2009年には鹿児島市立美術館で同展示を開催。今回は2回目で、奄美大島での開催は初めて。

 9日のギャラリートークは越間さんと中町さんのほか、奄美市から1人、金沢市から3人の作家が在廊。作品のテーマやこだわりを紹介した。若手作家のなかには、スペインやスリランカを旅して心に残った風景を描いたものも。越間さんが絹織物をフクギ染めしたものに、中町さんが加賀友禅の手法で嵯峨=さが=菊を描いた作品も展示されており、来場者の目を引いていた。

 越間さんによると、展示はあえて大島紬や加賀友禅の古典柄を外し、「自然の移ろいやその魅力」など、作家が心ひかれた景色を、作品を通して共有したいというメッセージを込めたという。

 中町さんは「加賀友禅は身近な草花や旅の記憶などを描く。デジタル化が進み、簡単にモチーフを検索できる今だからこそ、作家が目で見て感じたものを描くという本質に立ち返る必要がある。今回は業界を担う若手の力作も揃っている。新しい加賀友禅を観ていただけたら」と語った。

 奄美市名瀬から来場した女性は「大島紬と加賀友禅の違いを学びたくて来た。作者が作品に込めた思いと、制作に携わる努力が伝わってきた。ぜひ若い人にも観てほしい」と話していた。