世界自然遺産登録視聴会 3会場「登録決定」に歓喜

塩田知事(左から3人目)らがくす玉を開いて登録を祝った

 

 「奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島」の世界自然遺産登録が決定した26日夜、関係地域で登録の瞬間を見守る視聴会が開かれた。各会場は国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会の審議開場とオンラインでつないで開催。委員会が「登録決定」を発表すると、会場に拍手が湧き起こった。県庁、奄美大島、徳之島の会場で同時にくす玉が開かれた後、各会場の代表者は登録までの道のりを称え、今後の展望に向け決意を新たにした。なお、視聴会は当初、住民参加型を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、関係者のみ出席した。

「観光振興につなげていく」
県庁会場 塩田知事

 県庁では2階県民ホールに塩田康一知事や県議、県幹部ら約40人が集まり、大型スクリーンを設置して登録決定の瞬間を祝った。 塩田知事や県議会の田之上耕三議長ら6人がくす玉を開いた。

 塩田知事は「3年前の延期勧告、昨年のコロナ禍による委員会延期を乗り越えて、地元の皆さんが待ちわびた登録を成し遂げたことに感謝したい」とあいさつ。少年時代に徳之島で過ごしたこともあり「この地域が可能性を秘めた場所である」と実感。鹿児島県は屋久島に続いて二つ目の世界自然遺産、明治日本の産業革命遺産に続いて三つ目の世界遺産が誕生し「国内ならびに国外からの観光客誘致に大きなセールスポイントとなった」と評価し「今後も関係各位と連携しながら、奄美群島並びに県全体の観光振興につなげていきたい」と決意を述べていた。

 県環境林務部の松下正部長は伊仙町出身。「奄美の宝が世界の宝に認められた。ありがとうございました」と島口で感想。部長や次長の立場で「故郷」の登録に関わってきただけに「肩の荷が下りました。これで胸を張って島に帰れます」と一安心の様子。「先人たちが守ってきた奄美の自然を未来永劫守り続けていくために、今後も関係各所と連携して取り組んでいきたい」と話していた。

「自然を次世代につなげる」
奄美大島会場 六調とハブ隊で祝福

世界自然遺産「登録」決定後、六調に合わせてハブ隊が練り歩き祝福した

 

 奄美大島では、奄美市役所内に設置された大型スクリーンを関係者で見守った。行政、市商工会、エコツアーガイドなど関係者約50人が出席。世界遺産委員会で「登録決定」したことが映像で伝えられると、喜びの拍手が響き渡り、歓喜の輪が広がった。

 会場では登録を祝福する六調が始まり、奄美まつり名物のハブ隊が出席者を取り巻くように練り歩いて会場を盛り上げると、朝山毅市長らも立ち上がって手踊りして喜びを表現。六調には元ちとせさんと中孝介さんも加わり、祝福した。

 その後、奄美大島5市町村と地元選出の国会議員らによるくす玉開きが行われ、出席者全員で念願だった世界自然遺産登録の正式決定を喜んだ。

 朝山市長は「みなさんと共に喜び合えるこの日を待ちに待っていた。この自然を守り、次世代に確実につなげていくよう、関係機関とさらなる連携を図り、努力していくことを誓う」とあいさつ。

 大和村の伊集院幼村長は「登録には多くのみなさんの力添えをいただいた。登録はスタートと考え、自然環境、伝統文化を次の世代に渡していく」と決意を表した。

 宇検村の元山公知村長は「世界自然遺産登録はスタートとして、環境保全と資源の活用を取り組んでいきたい。世界に誇れるような島になるように頑張っていきましょう」と呼び掛けた。

 瀬戸内町の鎌田愛人町長は「奄美の自然環境が世界の宝として評価され、うれしく思うとともに、次世代に受け継いでいく重い責任を感じる。奄美の自然と希少な動植物を保護し、遺産にふさわしい奄美大島、瀬戸内町であるよう、関係機関と町民と共に頑張っていきたい」。

 龍郷町の竹田泰典町長は「大変待ち遠しい世界遺産登録。まさに長旅だった。これから世界基準の豊かな自然をPRし、世界自然遺産にふさわしい、持続可能な地域づくりにまい進したい」とそれぞれ登録の受け止めを語った。

「ワイド、ワイド」の歓喜
徳之島会場 「登録はスタート」

くす玉開きで待望の世界自然遺産登録を喜ぶ徳之島会場=26日、天城町防災センター

登録決定とともに徳之島名物「ワイド、ワイド」の歓喜に包まれた

 

 【徳之島】世界自然遺産登録視聴会の徳之島会場・天城町防災センター(同町天城)では、待望の「登録決定」が伝わると、同島名物の闘牛の〝勝どき〟に由来する「ワイド、ワイド」の歓声に包まれた。くす玉開きで喜びを共有した後、3町長らは足掛け約18年間の道のりも振り返って感謝しつつ「島の宝が世界の宝になった。守り次世代に引き継ぐ新たなスタートだ」と決意を新たにした。

 同会場も国県や徳之島、天城、伊仙3町をはじめ関係機関・団体の代表ら約50人が限定参加。ネット中継の大型モニターを通じユネスコ世界遺産委員会の模様を静かに見守った。午後6時41分ごろ、あっけなく登録決定が伝わると太鼓が打ち鳴らされ「ワイド、ワイド」の歓声が充満した。

 地元首長らあいさつで、高岡秀規徳之島町長は、18年間に及ぶ環境省など関係機関の尽力と世界に誇れる自然と文化を残してくれた先人たちに感謝し「今後は国立公園を保有する奄美群島が一丸となって共有していこう」。

 森田弘光天城町長は「ようやく、ついに世界自然遺産を勝ち取り、島の宝が世界の宝になった。この島を世界中に紹介できる。登録はゴールではなくスタート。この素晴らしい自然を未来に引き継いでいこう」。

 大久保明伊仙町長も「世界中で最も人口密度の高い地域の自然遺産。クロウサギのロードキルなど課題には私たちの知恵も試される。奄美・沖縄は〝環境文化型〟の自然遺産。これからがスタートだ」ともアピールした。

 視聴会後の3町長会見で、森田天城町長は自然登録の付加価値を生かした観光振興策に「屋久島―奄美群島―沖縄間のクルーズ観光開発」にも意欲を示した。