黒糖焼酎 製成量伸び、出荷量は微減

 

県全体も微減、巣ごもり需要下支え
世界遺産「売込む絶好のチャンス」
20酒造年度需給状況

 

 

 県酒造組合(濵田雄一郎会長)は6日、2020酒造年度(20年7月1日~21年6月30日)の県内本格焼酎の需給状況を発表した。出荷量を示す課税移出数量(25度換算)は9万4358㌔㍑で前年比0・8%減少。原料別課税移出数量(実数ベース出荷量)でみると、黒糖焼酎は同0・6%減の7082㌔㍑で、県全体同様、微減となった。新型コロナウイルス感染拡大による飲食店の時短営業や酒類提供禁止など厳しい情勢にあるが、世界自然遺産に登録された奄美では「国内外に黒糖焼酎を売り込む絶好のチャンス」として取り組みへの期待が高まっている。

 県全体の20酒造年度本格焼酎の需給状況をみると、製成数量(25度換算)は9万7673㌔㍑で、前年比16・5%減、コロナ前の前々年比では24・5%減となり、落ち込みが目立つ。課税移出数量(同)の方は9万4358㌔㍑で、前年比0・8%減、前々年比では6・7%減となった。減少は8年連続、7年連続で宮崎県に次ぐ2位となっている。

 減少要因について、酒造組合は少子高齢化やライフスタイルの変化、消費者嗜好=しこう=の多様化などにより消費量が減少傾向にある中で、「新型コロナ感染症が全国的に拡大し続け、緊急事態宣言の発出による飲食店での酒類の提供禁止やイベントの中止などにより、本格焼酎の需要にも大きな影響が出たことなどによるもの」と考察。課税移出数量を県内外で比較すると、県内は3万8237㌔㍑で、前年比2・7%減と依然として減少しているものの、県外は大消費地における巣ごもり需要が下支えし、同100・6%(0・6%増)とほぼ横ばいとなった。

 九州4県の課税移出数量を前年比でみると、熊本4・2%減、大分1・5%減、宮崎5・9%減となり、鹿児島の減少幅(0・8%減)が最も低く抑えられた。宮崎は11万6626㌔㍑と唯一、10万㌔㍑台を超えているが、減少幅が最大だった。

 県内の製成数量の原料別では、黒糖は7642㌔㍑で前年比24・9%増と大きく伸びた。課税移出数量は減少(前年比0・6%減)したものの、いも(同2・8%減)に比べると微減にとどまっている。県酒造組合の田中完専務理事は「黒糖焼酎は飲みやすさがベースにあり、数量については大手メーカーの貢献度がある。販路拡大に向けた営業努力、コロナ禍では紙パック対応によって巣ごもり需要が下支えしたのではないか」と分析する。一方で黒糖焼酎業界内のメーカー格差も。奄美支部の乾眞一郎支部長は「紙パックに対応できる大手は健闘しているが、瓶でしか対応できないメーカーは苦戦を強いられている。こうしたメーカーの方が圧倒的に多い。大手の伸びによって出荷量は微減を維持しているが、業界全体ではコロナ禍で厳しい経営状況にある」と説明する。

 世界自然遺産登録に指定されたことで各メーカーの中には商品ラベルでのアピールやキャンペーンに乗り出すところもある。田中専務理事は「国内だけでなく海外に向けて黒糖焼酎を売り込む絶好のチャンス。英文サイトも開設されているだけに、ECサイトを含めさまざまなツールを活用して海外発信をさらに強化していきたい」と述べるとともに、千載一遇の世界遺産波及効果について「独自に咀しゃくし深掘りすることで、波及効果が長続きする。自然と同時に、人の営みや生き方、伝統的な行事など環境文化型も奄美の世界遺産の特徴だけに、そこに黒糖焼酎業界としては結びついていきたい。組合員一丸となり、国や県、市町村、関係機関と連携しながら世界遺産を生かす黒糖焼酎業界としての中長期的なビジョンを策定することも必要ではないか」と語った。