徳之島の電力守ろう

「島の電力供給を守ろう」。九電・新徳之島発電所前で軽石除去のボランティア作業を展開した天城町職員と家族たち=14日、同町喜治海岸

段差のある海岸線からの軽石搬出に悪戦苦闘

新徳之島発電所 軽石除去に人海戦術
天城町職員・家族など120人

 【徳之島】小笠原諸島の海底火山から噴出した軽石が南西諸島に漂着している問題で、徳之島では風向きの変化にも伴い島の南~西部海岸を含む全域にじわりと拡大。それにより、海水の機関冷却に頼る九州電力・新徳之島発電所(天城町天城)は軽石吸引による機関故障を懸念。天城町職員やその家族たちは14日、島の電力供給を守ろうと「喜治(きじ)海岸」の軽石除去の奉仕作業に汗を流した。

 天城町総務課(祷清次郎課長)によると、徳之島西岸の町内の海岸線でも風向きや潮流によって9日ごろから軽石漂着が顕著となり、ほぼ全域に広がった。水産業や観光分野にも影響が及び始めた。町職員労働組合(中原智浩執行委員長)も呼応。一体となって「優先順位をつけた奉仕作業で産業を守ろう」と奮起した。

 当初計画した「松原漁港」は漁協組合員など受益者たちが。さらには「与名間海浜公園(ヨナマビーチ)」も観光関連業者らを中心にそれぞれ約3日かけて一次除去。自助努力していたことが判明。その矢先、ディーゼル発電機関の冷却水の取水口を喜治海岸(防波堤から約50㍍付近)に敷設している九州電力送配電㈱新徳之島発電所(川崎隆二所長)側から深刻な相談が寄せられていた。

 干潮時を見計らって午前8時からあった奉仕作業には町職員とその家族など約100人と、同発電所関係者ら合わせ約120人が参加。波打ち際に堆積したり、砂に混入した軽石を根気強く人海戦術でかき集めた。土のう袋で高低差のある大型のフレコン袋(約5百㌔用)まで運んで詰め替えてトラックで回収。約2時間かけて総量約20㌧を旧クリーンセンター敷地に搬入保管した。

 徳之島全戸に電力供給(通常100%)する同発電所の川崎所長(56)は「海水で機関冷却しているが、既に小粒の軽石を吸引。取水口が詰まると最悪の場合、発電停止に。与論島の例もあり(隣接の)平土野港には燃料タンカーも接岸。満潮時は潮流と風向きによっては再漂着するため、干潮時の除去が重要。職員のみなさんには心から感謝したい」。

 町の祷総務課長(55)は「電力供給に支障があってはいけない。休日返上で奉仕した職員や家族のみなさんに感謝。軽石対策は今後、長期的な取り組みになる可能性も。職員が率先して各種団体を含めボランティア体制を広げたい」。

 職員家族の上田琉愛(るい)さん(岡前小4年生)は「軽石が減って機械の故障がなくなってほしい。これからも進んでボランティア協力したい」と話していた。