天城町の「高倉」8年ぶりふき替え

かやぶき職人を欠き、試行錯誤・悪戦苦闘の中にも月内完成を目指している天城町の「高倉」=25日、同町天城

伝承者欠き
試行錯誤で悪戦苦闘

 【徳之島】天城町防災センター敷地(同町天城)に保存展示されている伝統建築の高床式倉庫「高倉」(町指定文化財)。かやぶき屋根の原形を留めた高倉としては今や徳之島では唯一の存在に。今月初旬からそのわらぶき屋根のふき替え作業が8年ぶりに始まり、試行錯誤の悪戦苦闘が続いている。

 高倉は、高温多湿で日差しの強い奄美群島の穀物の貯蔵倉庫として各地で見られた。三角屋根の裏側が倉庫部分で、金くぎは使わず、柱(4~6本柱)はイジュ(ツバキ科)の木をカンナで削って、ネズミも登れないよう磨き上げられたという。

 築100年以上の経年劣化や台風被害などで次々と消滅。徳之島では、徳之島町畦海浜公園に、かやぶき職人がいないためコロニアルぶきに代わってしまった1棟があるが、古来のかやぶき屋根の原形を保っているのは天城町の同棟のみとなった。

 天城町の文化財担当によると、屋根のふき替え作業は2013年11月以来8年ぶり。町内の建設業者に委託、豊村光広さん(57)=同町三京=ら4人が今月初旬から挑戦を始めた。

 じつは、豊村さんら4人全員が「かやぶき屋根のふき替えなんて初めて…」。前回までは〝かやぶき技術の匠(たくみ)〟が現場で直接指南したが、高齢化の波とともに足を運ぶことが叶わなくなった。ノウハウの頼りは動画サイトの「かやぶきの仕方」。スマートフォンを覗きつつハチジョウススキの束を抱えての試行錯誤。決定的な工程ミスで苦いやり直しも体験した。

 豊村さんは「伝統技術を継ぐのはやっぱり難しい。教える人がいないと、なかなか前に進まない。技術や工程をビデオなどに残し永久に伝える取り組みも大事」。先人や先輩たちの教えの大切さも痛感しつつ「今月末までには完成させたい」ときっぱり。