『植物バイオサイエンス』出版

農業生産の基礎からスマート農業まで網羅した新刊「植物バイオサイエンス」(共立出版)


編著者の1人・実岡寛文氏(広島大大学院教授)

農業基礎―最新スマート農業まで網羅
広島大・実岡教授(伊仙町出身)ら

 【徳之島】広島大学大学院統合生命科学研究科・生物生産学部の実岡寛文(さねおか・ひろふみ)教授(農学博士)ら編著の『植物バイオサイエンス』(共立出版)が出版された。植物生産の基礎的分野からSDGs(持続可能な開発目標)、ゲノム編集やロボット技術、スマート農業までの最新情勢を専門家9氏が紹介。農学・生物生産学・植物生理学に関する学生らテキストのみならず研究者や農家、新規就農者、農業技術普及関係者たちの関心も集めそうだ。

 新刊『植物バイオサイエンス』は、実岡、川満芳信(琉球大農学部教授)両氏の編著者に、著者は東江栄(九州大大学院農学研究院教授)・上田晃弘(広島大大学院准教授)・菊田真由実(同助教)・齋藤和幸(九州大大学院准教授)・諏訪竜一(琉球大准教授)・冨永るみ(広島大大学院教授)・長岡俊徳(同准教授)の7氏。

 同著は、①作物の伝播と種類②植物のしくみと形態形成③光合成④植物生産と土壌⑤植物の必須元素とその役割⑥環境ストレスと作物生産⑦植物の形質転換とゲノム編集⑧スマート農業とカーボンニュートラルの計8章で構成。

 野生植物から農作物への栽培化、農耕文化への発展。植物の形態や形成機構、生命活動の基となる光合成のしくみ。植物の生産を支える土壌の構造やその働き、植物の生育に必要な元素の種類とその役割、植物の環境ストレスへの適応機構。SDGsへの取り組み。新品種を作り出す遺伝子組み換えとゲノム編集技術。そしてロボット技術やICT(情報通信技術)など先端技術を活用したスマート農業技術にいたるまでをテキスト形式に網羅。

 「スマート農業とカーボンニュートラル」の章では「サトウキビの光合成機能を利用したCO2の固定」に関して世界中のキビ単収(1㌶平均75・1㌧)にも焦点を当て、日本(同約54・3㌧)など低単収の国々や地域がスマート農業の普及で単収を上げると「CO2を19・14億㌧も吸収・固定する」試算も紹介している。

 編著者代表の実岡教授(伊仙町出身)は巻頭言で「近年、農耕地の劣化、地球環境の変化に伴う異常気象、化石エネルギーや肥料資源の枯渇、高齢化による人手不足など、食料生産の基盤となる環境が変化し、安定した生産が危うくなっている」と指摘。将来に向けて持続可能な食料生産を行うには、「実践的な食料生産科学や技術の創出が必要。そのためにも植物の生産のしくみと生産技術を様々な視点から科学的に学習し、解き明かすことが重要」と提言している。

 B5判、208ページ。11月30日に発売され、価格3190円(税込み)。