ウィズコロナの時代 地域交流、社会参加へ 上

むかいクリニック通所リハビリテーションで行われている「グループ体操」


利用者とあおぞら児童クラブとの交流会、利用者が「こどもの日」に小浜保育所にプレゼントした作品

活動でモチベーションアップ

 奄美では昨年12月に入り沖永良部島や与論島で新規感染者が出たものの、新型コロナウイルス感染は県内では落ち着いた状態にある。11月下旬には県の対策本部会議で警戒基準が見直され、新たに策定した5段階のうちの「レベル0」(直近の新規感染者数がおおむねゼロ)に決定、同時にこれまで少人数、短時間とされていた飲食の行動制限なども撤廃された。制限の緩和・見直しは、支援が必要な人々にも及んでいる。自粛続きだった、こうした人々をめぐる活動もICT(情報通信技術)の活用でコミュニケーションを可能にするなど新たな方法・工夫により再開、地域交流やふれあいがもたらす社会参加で、心身機能低下・社会とのつながり減少といったフレイル予防が図られている。介護や医療の現場でも「ウィズコロナ」へ歩みだしつつある。

 厚生労働省がコロナ禍で面会が制限されている介護、障がいなどの福祉施設の入所者が家族らと直接面会できるよう、施設に安全な方法の検討を求める通知を全国の自治体に出したのが昨年?月下旬。医療機関にも面会対応の検討を求めた。この医療施設や高齢者施設の入院・入所者の面会規制は昨年?月の定例県議会一般質問でも取り上げられた。答弁した谷口浩一くらし保健福祉部長は、国の基本的対処方針では徐々に規制が緩和されていることを説明。それによると、「地域における発生状況等を踏まえるとともに患者や利用者、面会者等の体調やワクチン接種状況、検査結果(PCRなど)等を考慮し対面での面会を含めた対応を検討する」という内容であり、県はこの方針を県内の医療施設や高齢者施設に周知した。

 国が対処方針で示した通り「各施設において地域における新型コロナの発生状況や関係者の体調、ワクチン接種や検査状況を考慮し対面を含めた面会の対応を検討してもらいたい」が県の見解だ。施設判断にお墨付きが与えられたと解釈できるだろう。

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 奄美市名瀬にある、むかいクリニック(向井奉文院長)。1997年12月に開院したが、2002年4月には入院病棟や通所リハビリテーションを開設した。医療施設内ということから通所リハビリでは医師の指導のもとデイケアが行われており、介護保険の支援1・2、介護1~5までの認定を受けている高齢者が利用できる。1日定員は20人で現在の登録者は約50人。ベッドから動けない人、車いす、歩行器が手放せない人などが利用している。

 デイケアの一日のスケジュールはこうだ。利用者は自宅から通うが、事業所到着後の午前9時過ぎ、まず身体レベルや疾病状況などの健康チェックがあり、血圧や体温などが測定される。入浴、個別リハビリ、物理療法、口腔体操と進み、昼食を経てグループ体操、レクリエーション、午後3時のおやつ後に帰宅となる。医師・看護師・介護福祉士・理学療法士・管理栄養士といった専門職が対応している。

 「奄美市でも感染者が出始めた20年4月、2人ほど利用控えが見られた。自宅では家族と過ごしており、感染への警戒で『外に出るのがこわい』といった理由から。だが、ごく少数。介護認定1~5のみなさんは通所リハビリを利用しないと身体レベルが下がってしまう。また入浴などの家族負担もあり、ほとんどの方が利用を継続した」。サービス提供責任者で理学療法士の中村千登勢さんは振り返った。

 家族の理解のもと安心して利用してもらおうと受け入れる事業所側も通知文などで感染症対策の浸透を図った。対策方法として実施されたのが、▽利用者・スタッフともにマスク着用▽定期的な換気▽手指消毒、車内・室内・物品などの消毒▽感染症対策の研修―など。事業所の建物は外来対応の医療施設(現在入院は受け入れていない)と併設だが、入り口は別にしており、発熱の症状がある患者などと高齢の利用者が接することはない。こうした対策を徹底しデイケアは継続されたが、島内でのクラスター(感染者集団)発生などにより自治体が発表する警戒レベルが最高水準まで引き上げられると活動に支障が出るようになった。

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 見合わせたのは外部から専門家を招いている音楽療法、密になりがちで食材を手で持ってしまう調理実習、外出しなければならない屋外レク。このうち屋外レクではスーパーに移動しての買い物も取り入れている。「家族と一緒に買い物に行くことはあまりない。品物を選び、支払いもすることで脳トレになり、カートを動かしながら店内を歩くことは体力維持につながる。なんでも介助よりある程度見守りながら、好きな物を買う喜びを味わうことができるよう心掛けている」(中村さん)。
 リハビリにより再び「地域で生き生きと活動する」を目指す中、子どもたちなどとの世代間交流も大切な活動だ。事業所では小浜保育所の園児、あおぞら児童クラブの児童との交流を続けており、園児や児童の訪問受け入れではなく、事業所側が出向く形をとっている。保護者らと共に、まるでじいちゃん・ばあちゃんのように子どもたちの学習発表の様子を見たり、「こどもの日」のプレゼントとしてかぶとや鯉のぼりの壁画作品を持参することもあった。

 全国的な新型コロナの急激な感染拡大の影響を受け奄美でもマスク不足が長期化した時は、利用者はミシンで布製マスクを手作りし子どもたちにプレゼント、とても喜ばれた。マスクの手作りには認知症の利用者も参加したが、中村さんによると、昔取った杵柄が身についているのか難なく完成させたという。交流により孫やひ孫のような子どもたちに感謝され、役に立つことの実感で精神的なモチベーションのアップにつながっており、子どもたちと文通する利用者も出ている。