コロナ禍の3学期にICT教育挑む

3学期の臨時休校時からオンライン学習を開始している龍南中学校の授業風景(提供写真)

オンライン学習試みた龍郷町・龍南中
デジタル化教育の課題も

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、龍郷町では全小中学校の3学期の始業式が延期され、約1週間の臨時休校となった。しかし、その期間中もICTを活用し、生徒たちに向けたオンライン学習を試みた中学校がある。奄美市名瀬の市街地と奄美空港を結ぶ国道58号線沿いの丘にある、同町立龍南中学校だ。21日現在、生徒たちは登下校を再開し教室での通常の授業も始まっているが、臨時休校時と同様にオンラインによる授業の配信も引き続き行われている。その理由と、オンライン学習の継続で見えてきたデジタル化教育の課題とは何か、一例として紹介する。

同校は、1948年に竜郷村立第一中学校として開校。設立から73年目、コロナ禍の2年目を迎えた今年度は、「世界に拓く龍風の丘」をキャッチフレーズに、生徒たちが持つ良さを伸ばす教育に、職員一同が一丸となって取り組んでいる。そんな中、最終学期で始めたICTの活用による授業の配信は、同校が目指す学校像に対する独自の挑戦の一つと言えそうだ。

ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術、または、それを利用したコミュニケーションを指す。そして、「ICT教育」「ICTタブレット」とは、この技術を教育現場に生かす、または、それを生かすツールという意味になる。今回の同校によるオンライン学習は、同町教育委員会が、配布したICTタブレットを各生徒が自宅へ持ち帰ることを許可したことで実現したという。

「休校期間中の3学期に向けたオンライン学習は、冬休みの延長となりかねなかった自宅待機での生活リズムが取れ、または、(登校時と変わらず)勉強が続けられたと生徒、保護者たちからも評判だった」。そう語ったのは3年生の副担任を務め、生徒たちのタブレットの通信設定、他職員たちにオンライン授業の方法を共有した西星良(せいら)教諭。新型コロナウイルスで余儀なくされた、長期間の自宅での待機生活の中、ICTの特徴の一つである「双方向性」がもたらした好事例の一つと言えるだろう。

しかし、冨士篤也校長は、コロナ禍における教育のオンライン化による利便性は肯定しつつ、その弊害も指摘した。「現在休んでいる生徒、または、今後不登校の生徒に向けた配信などの可能性を踏まえると、継続すべきデジタル技術だと思う。しかし、思春期の生徒が、画面や音声だけで果たしどこまで、他者とのコミュニケーションが取れるのか」。

続けて冨士校長は「中学校の3学期は、小学6年生の入学説明会、立志式、卒業式など人生の節目と言える行事が控えている。これらをオンラインによる非対面で行うことは果たして正しいことなのか」とただし、デジタル技術に対する、「アナログ」の良さを改めて実感していると語った。学校の教育現場とは、勉強を教える、学ぶ以外に、他者と直接関わることで得られるコミュニケーションとその学びの場という意味もあるだろう。

しかし、今後について冨士校長は「何よりも生徒たちが、安心して生活出来ることが第一。コロナの収束を願いつつ、オンラインとアナログの各長所を生かした、並行した運用を生徒たちのために続けていきたい」と希望を語った。