奄美大島の全世帯に配布されるガイドブック(左)と英語などで記載した別冊版
奄美大島5市町村で組織する奄美大島自然保護協議会(事務局・奄美市世界自然遺産課)は、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産となったことから、2013年10月に初版発行した「奄美大島自然保護ガイドブック」を改訂、島内全世帯への配布を進めている。世界自然遺産登録に向けた取り組みなどが中心だった初版から、遺産登録された理由や自然保護など今後取り組む必要がある課題などを中心とした内容に改訂。海外からの観光客などを対象に英語や中国語、韓国語で島に生息する希少動植物などを紹介した別冊版も新たに制作した。
ガイドブックは、2003年に国の世界自然遺産候補地に関する検討会による琉球諸島の候補地選定から昨年7月の登録に至るまで、奄美・沖縄の世界自然遺産登録の歩みを紹介、独自の生物進化を背景に、希少な固有種に代表される生物多様性などが評価され、世界自然遺産となったことなどを記載。一方で、登録の際、世界遺産委員会から、アマミノクロウサギなどの希少動物のロードキル対策や河川の再生、観光管理などの課題が示されていることに触れ、自然環境の保全など継続した取り組みの必要性が記されている。
また、希少種の保護と外来種対策についても、現状を詳しく紹介。国、県の天然記念物(13種)や希少野生動植物として国(26種)、県(25種)、5市町村(56種)が指定している希少種計120種を掲載、捕獲や盗掘、売買などを禁止し、保護協力なども求めている。
外来種対策では、ノネコや繁殖力が強い特定外来植物などの問題を指摘。山間部や河川、海岸などでの不法投棄などの問題にも触れている。
自然保護と観光の両立を目指すエコツーリズムの取り組みも紹介。自然保護と持続的な利用を図るため自主ルールの制定やガイドのスキルアップなどを目的とした「奄美大島エコツアーガイド連絡協議会」が組織されたことなども紹介している。
同協議会では今回、改訂版5万部を作成、5市町村の約3万2000世帯に配布するほか、各自治体の担当課窓口に配備した。また、海外からの観光客などを対象とした別冊版も2千部作成した。
A4サイズ20ページ。13年の初版以来、初の改訂となった。同協議会の担当者は「世界自然遺産となった奄美の現状を知ることが、自然保護の最初の一歩。そのためにガイドブックを活用してもらいたい。一人ひとりの心掛けが自然保護につながる」と話している。