「オオフサモ」が繁茂する様子(環境省提供)
仲里川で行われた防除作業(2021年5月31日)
瀬戸内町・鹿児島県・環境省は29日、生態系や農業に被害を及ぼすことから特定外来生物に指定されている水草「オオフサモ」について、瀬戸内町古仁屋市街地を流れる仲里川の生育地で「ほぼ根絶達成が確認された」と発表した。「根から丁寧に除去する」などの防除手法により、最後に個体が確認されてから1年以上、確認されなかったとしている。
発表によると、仲里川内では大きく3カ所のオオフサモの群落とその間の小規模な生育が確認されていた。そこで昨年3月、瀬戸内町事業で防除を開始。計5回作業が行われ、関係行政機関だけでなく地域のガイド・観光業従事者、スポーツ少年団など多くの町民も協力した。
昨年7月中旬には県が外来生物法の防除の確認をとった上で、根を含む堆積層がある数十㌢の深さまで土砂を掘削。以後、複数回にわたる確認作業(いずれも駆除量はゼロ株)を実施。7月6日には町・県・環境省で再度生育地全体において丁寧な確認作業をしたところ個体の確認はなく、「最後に個体が確認されてから1年以上確認されなかったことから、仲里川では根絶に至った可能性が高い」と判断した。今後、数年間は定期的なモニタリングを継続し、個体の有無を確認する予定という。
環境省によると、奄美大島では仲里川内を含めて4市町村11カ所でオオフサモの生育が確認されている。大きな河川に侵入し数百㍍にわたって繁茂している箇所や水田に侵入し農業被害を引き起こしている事例も報告されているという。このうち防除実施河川は名瀬小宿、名瀬有屋町、龍郷町大勝の3河川で重機、手作業により防除が行われているものの再繁茂と、根絶には至っていない。奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「防除方法で重機か手作業か、場所の状況によって選択しなければならない。重機で作業に取り組んだとしても仲里川での今回の事例を参考に、手作業で底泥剥ぎ取りにより根から丁寧に除去するなど、防除方法改善に努めるよう、関係機関の情報共有・連携を図っていきたい」と語った。
環境省では「侵略的外来生物対策は世界自然遺産(奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島)の価値の保全上も重要な課題」として、多くの住民の協力を得て実施した今回の事例を踏まえ、引き続き関係機関などと連携して防除を推進していく方針だ。
オオフサモ 南アメリカ原産の水草。熱帯魚の水槽などに鑑賞目的で使用されることが多く、川に捨ててしまうことで広がる。在来種との競合による駆逐や水路の水流を阻害したり、農業被害を引き起こすといった影響が報告されている。国内では2006年に外来生物法で定める特定外来生物に指定され、栽培、保管、運搬、販売、野外への放出などが厳しく規制されている。