介護報酬24年度改定に不安

奄美の関係団体「サービス内容充実優先」

 3年ごとに行われる介護報酬の改定は、2年後の2024年度に向けて来年から議論が本格化する。介護業界はプラス改定を求めるが、7月の参院選で全国老人福祉施設協議会(老施協)が比例選に擁立した自民党候補が落選したことで、影響が懸念されている。奄美の関係団体からは介護サービスの対象者となる利用者第一に「サービス内容充実こそ優先したい」との声がある。

 介護報酬は、介護サービスの公定価格。プラス改定は、利用者の料金負担が増える一方、介護事業者が得る対価も増え、経営安定につながる。改定は3年ごとで、前年秋ごろから政府・与党内での議論が始まり、年末に決まるケースが多い。次期改定は24年度であり、来年が重要な局面となる。

 改定に向けた交渉では政治力が左右する。04年から組織内議員として活動した参院議員が2期目途中の13年に死去。今回の参院選で2期目は実現しなかったが、老施協擁立の候補者が初当選した16年まで空白期間が生じた。この間の15年度の改定は、マイナス改定だった。老施協擁立候補が当選後の18年度と21年度は、プラス改定が実現した。このため介護業界からは「頼みの綱の政治力を失った。介護報酬改定は厳しい交渉になる」との危機感が出ている。

 訪問介護・看護、通所介護、福祉用具貸与などの介護保険サービス提供事業所で構成する奄美大島介護事業所協議会の盛谷一郎会長は「介護報酬だけでなく制度自体の見直しも必要ではないか。本当に必要なのか、無駄ではないかと感じる部分もある」と指摘する。介護保険関係で相談を受け自宅を訪問すると、介護だけでなく障がい、子育てといった分野の支援の必要性も痛感することがあるという。「分野ごとにタテ割りで取り組むより幅広く対応する『重層的支援』の方が現状に即しているのではないか。こうした支援の在り方を制度として確立してほしい」とし、報酬改定については「緊縮財政であり、懸念はある。ただ、プラス・マイナスどのような改定内容になっても事業者としては利用者に提供するサービス内容の充実に努め、質の向上を図っていくこと大切」と盛谷会長は述べた。