「第61回現水展」で奨励賞受賞

終戦を願う作品「プーチンとウクライナ」を説明する雪山さん

雪山さんの受賞を喜び駆け付けた出身者らと

タイトルは「プーチンとウクライナ」
徳之島出身の雪山さん

 【東京】徳之島出身で埼玉県の額縁専門会社代表取締役会長を務める雪山渥美さん(88)が「第61回全国公募・現水展(主催・現代水墨画協会)」で奨励賞に輝いた。8日、行われた授賞式には妻の光恵さんほか、出身者らが駆け付け初受賞を祝っていた。

 台東区上野の東京都美術館(上野公園8―36)で開催中の同展は、「新しい水墨画の創生」をテーマにした、全国公募展。文化庁ほかが後援している。各地から250点以上の応募があった中から、雪山さんが見事奨励賞に。タイトルは、ずばり「プーチンとウクライナ」。 

 4月から構想を練り、7月いっぱいの締め切りに合わせて20号の白紙に向かった。漆黒の下地で左中央にプーチン露大統領が浮かび、戦禍の人々がその周りに描かれている。一刻も早い終戦を願う雪山さんは、「憎たらしいプーチンはすぐに仕上がった。でも、孫の遺骨を抱く女性の表情は、何度も書き直しましたね」。そう奮闘ぶりを振り返り、「こうして描けるのは、妻や応援してくれる方々のおかげです」と笑顔で語った。

 授賞式は、妻の光恵さんのほか、奄美大島や徳之島出身者らが見守った。関東天城町会会長の里村哲正さんは「雪山さんの衰えない創作意欲に驚き、後輩として勇気をもらえました。一方、こうして集まれるのもうれしい」と郷友会がない現状で、出身者が集える機会に感謝していた。

 雪山さんは、1934年大阪生まれ。4歳の頃から徳之島で育った。56年に上京、喫茶店ボーイから商社マンまで、さまざまな苦難を乗り越えて額縁専門メーカー「アルナ」を創業。現在、代表取締役会長を務めている。絵に取り組んだのは70歳を過ぎてからだという。渾身(こんしん)の作品「プーチンとウクライナ」が展示されている展覧会は、入場無料で14日まで開催されている。会期中の問い合わせ先は電話03・3823・6921。