奄美地域懇談会

懇談会では委員ら16人が参加し意見を出し合った

遺産学ぶ場・活用機会創出を
鹿児島県ビジョン、地域素案へ意見交換

 鹿児島県が改訂した「かごしま未来創造ビジョン」に基づく奄美地域の「地域振興の取組方針」の策定に向けた第2回懇談会(座長・新川康枝県大島支庁長)が11日、奄美市名瀬の奄美会館であった。この日は、検討の方向性となる素案のたたき台が事務局の県大島支庁から示され、奄美群島の取り組み方針などについて議論。委員からは、世界自然遺産を学ぶ場・活用する機会の創出を訴える意見が相次いだほか、素案の再考を求める声なども上がった。

 かごしま未来創造ビジョンは、概ね10年後を見据えた中長期的観点で県が目指す姿や施策の基本になる全体の方向性を示したもの。今年3月の改訂に伴い、県振興局や支庁では地域ごとの方針を示す「地域振興の取組方針」の策定作業を進めている。 

 たたき台では、県ビジョンに沿って奄美群島が抱える地域の課題や現状が抽出。目指す姿は「誰もが安心して暮らし、活躍できる奄美地域」をキーワードに、取り組み方針には、▽世界自然遺産登録を契機とした多様で魅力ある奄美群島の振興▽未来を拓く人づくり▽暮らしやすい社会づくり▽活力ある産業づくり―など5項目を掲げる案が示された。

 協議には委員16人が出席し、地域の子どもや住民、Uターン者など、世界自然遺産を学ぶ環境整備などを求める声が次々と出た。「教科書で日本の桜は学べるのに、地域の自然を学ぶ授業がない」「学ぶ場がないと保全や活用する人材が育たない」などの見解や、「帰って来た子にも教育環境を」といった意見も相次いだ。

 この他、島内での出産推進、食文化の保全、農業人材の確保を求める声もあり、素案については「(人口や経済など)縮減するという前提が欠けている」「課題、目指す姿、取り組み方針の構造が分かりづらい」と再考を求める声も出た。

 今後は10月下旬に素案を作成し、県政推進会議を通して知事へ説明。委員に諮りつつ来年2月には最終案作成にかかり、3月末の改訂を目指していく。