東大大気海洋研究所が講演会

奄美の生態や海洋環境研究などについて発表があった講演会

セカイとつながる奄美テーマに
「海は島々をつなぐ海路」

 今年7月、瀬戸内町に研究拠点を整備、研究活動を始めた東京大学海洋研究所主催の講演会「セカイとつながる奄美~島嶼地域における環境学研究~」が3日、奄美市名瀬の市民交流センターであった。同大の研究者ら7人が、海洋環境や島嶼地域などをテーマに、それぞれの分野から奄美との関連性などを発表、奄美の多様な生態系や環境、文化などの魅力を語った。

 講演会は、同研究所が、地域と連携した学びの発展や地元の高校生の教育支援の一環として、研究成果などを発表することを目的に行われた。会場には島内などから約60人が参加したほか、オンラインによる参加もあった。

 同研究所の河村知彦所長は「奄美の海と生物から知る日本の未来」と題し、サンゴ礁とマングローブによって奄美の多様性ある海洋環境や生態系があることを指摘する一方、「海水温の上昇が生態系に大きな影響を与えている」と警鐘、地球温暖化対策の重要性を呼び掛けた。

 兵藤晋副所長は、海水中に含まれるDNAを分析することで、その海域に生息する生き物の種類などを把握する調査方法を紹介。「生態系を理解し変化を長期間モニタリングする手法として活用することで、地域の生態や資源の理解につながる」などと述べた。

 同研究所の横山祐典教授は、喜界島沿岸のハマサンゴの骨格調査で、大気中の二酸化炭素濃度上昇による海洋の酸性化が進んでいることが明らかになったことなどを紹介、「サンゴから海洋環境の長期変化の記録が分かる。海洋の酸性化がサンゴやウニなどの生息にも悪影響を及ぼしている可能性がある」などと話した。

 同大大学院人文社会系研究科の西村明教授は、自然科学や社会科学など多様な分野から環境問題について考察した「鹿児島環境学宣言」に触れ、「シマごとに独自性が高く、都市とは全く異なる特徴を持っていることが奄美の強み。若者には島を離れる前にいろんな角度からシマの歴史や文化、自然に触れほしい」と呼び掛けた。

 瀬戸内町にある同大医学研究所奄美病害動物研究施設の横田伸一助教は、同施設がフィラリアの治療法の発見と治療薬の開発、ハブ咬傷治療の血清開発に取り組んできた実績を紹介。地球の温暖化などの環境変化で、国内では根絶された感染症などが再び発生する可能性などを指摘した。

 同大大学院情報学環の矢口祐人教授は、離島について「島は本当に小さな存在なのか」と問いかけたうえで、「海は障壁ではなく、島々をつなぐ海路。奄美大島は太平洋の島々とつながっている」などと話し、島嶼地域が持つ可能性を示した。

 沖縄県本部町教育委員会の吉村健司さんは沖縄や奄美のカツオ一本釣りと本土の一本釣り漁を比較。エサ不足などからカツオ漁が衰退の危機にあることなどを指摘、エサとなる海洋資源の活用の必要性などを訴えた。