新作「第二開国」と奄美の魅力語る

待望の新作『第二開国』を手にする藤井さん

SF小説家、藤井太洋さん 瀬戸内町出身

 瀬戸内町出身のSF小説家・藤井太洋さん(東京都在住)が6日、奄美新聞社を訪れ、自身のSF小説『第二開国』の舞台として描いたふるさと奄美大島への思いなどを語った。

 藤井さんは2012年に「Gene Mapper」を電子書籍として販売。15年には「オービタル・クラウド」で日本SF大賞と星雲賞日本長編部門を受賞。日本SF作家第18代会長を3年間務め、アジアSF協会の暫定初代会長にも就任している。

 現在は東京都内で執筆活動を続けており、2、3年に1度、実家のある同町を訪れている。今回の来島は、新型コロナウイルスの影響などもあり、約3年ぶり。昨年10月末に出版した新作『第二開国』のPRも兼ねての帰郷となった。

 同作の舞台となるのは、近未来の奄美大島。小説の中には藤井さんが10歳~古仁屋中学校を卒業した15歳まで過ごした同町古仁屋の町が「鎮西町古志埜」として登場。人口減少が続く町に世界最大のクルーズ船寄港計画が持ち上がることで、物語が展開される。

 Uターンで故郷の町に戻ってきた主人公、32歳の青年「昇雄太」について、藤井さんは「自身の生い立ちも投影させながら人物像を描いた。物語には実際にある場所が名前を変えて出てくる。名前もできるだけ、奄美の民俗文化を反映させることで、SFの世界に現実味を持たせている」と話すなど、作品の至る所にふるさと奄美への思いがちりばめられている。

 題名の『第二開国』は、クルーズ船を黒船の来航になぞらえ、「シマの再生」への思いなどが込められている。藤井さんは「欧米的な正義という暴力と、どう向き合いシマの伝統や文化を守っていくか。作品を通して考えてもらえるとうれしい。奄美の人は10倍楽しめると思う」と、作品の魅力を語った。