世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム

4地区代表と服部正策さんのトークセッションがあった「世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム」

 

 

「保全と活用で自然継承」
湯湾岳魅力で講話 多くのイベントで賑わう

 

 

 県主催の「世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム」が22日、宇検村の総合体育館であった。島内5市町村の後援で約千人が来場。登録エリアの核心部・湯湾岳についての基調講演やトークセッションなどで、奄美の自然を後世に継承する誓いを新たにした。

 生物多様性と独自の生態系が認められ、奄美大島は2021年7月に世界自然遺産に登録。主催者の塩田康一知事は「登録から1年が経過し、環境保全と活用の両立が確実に浸透しつつある。今後も官民一体となり、島の宝を県内外に発信し次世代に継承したい」とあいさつした。

 「湯湾岳の楽しみ方」をテーマに登壇した服部正策さん(世界自然遺産地域科学委員)は、奄美に生息する固有野生生物(ハブやアマミノクロウサギなど)の起源を講話した。

 奄美の固有種は2000万年前に大陸南方から北上して独自の進化を遂げたというのが定説だが、服部さんは「氷河期に南から北上するのはおかしい」と指摘。揚子江(中国)流域でクロウサギの近縁種らしき化石や、岐阜県でハブに近い種の化石が発掘されたことを挙げ「北上ではなく、南下したのではないか」と推測した。

 また島西側の東シナ海に面した地域が中生代ジェラ紀の地層であることから、「太平洋の海底にたまった泥が1億年以上かけて地表に現れ、奄美大島が形成された」と解説。南下した種が、その後大陸から切り離された奄美で進化したため「最高峰の湯湾岳には寒さに強い固有種が多数生息している」と、湯湾岳の魅力を話した。

 トークセッションでは大和村・龍郷町・奄美市・宇検村の4地区代表者と服部さんを交え、島の魅力について意見を交換。湯湾岳の教育的な活用法や、遺産登録地としての意識のあり方などを共有した。

 夕方には宇検村主催で、東京大衆歌謡楽団の演奏やのど自慢大会などが行われ、世界自然遺産登録1周年に花を添えた。