奄美市 津波想定し防災訓練

訓練で、集落内の高台にある公園に避難した大熊地区の住民ら

 

1年前の津波警報教訓に高台避難や交通渋滞解消
住民や関係機関の連携など確認

 

 奄美市は22日、奄美群島太平洋沖(北部)地震による津波発生を想定した防災訓練を行った。住民らは町内会などを中心に徒歩で高台避難したほか、車による避難、要配慮者避難の支援訓練なども実施。自治会など46団体約1700人が参加し、避難経路の確認や誘導、安否確認などの情報伝達について、住民同士の連携や行政など関係機関との連携を確認した。

 同市の防災訓練は2019年以来3年ぶり。昨年1月、南太平洋・トンガ諸島沖で海底火山が噴火し、奄美群島などに津波警報が発令された際、高台を目指す車両により一部道路で交通渋滞が発生するなど、避難時の課題が浮き彫りとなったことから、1年前と同様に津波警報発令を想定して実施することになった。

 訓練は、午前9時、奄美群島の太平洋沖でマグニチュード8・2の地震が発生、10分後に市内太平洋側に、26分後に東シナ海側にそれぞれ津波が到達したしたと想定し行われた。奄美署や陸上自衛隊奄美駐屯地、名瀬海上保安部、名瀬測候所、大島地区消防組合の5機関も参加した。

 市は地震発生と同時に安田壮平市長をトップとする災害対策本部を設置、2分後の午前9時2分に「大津波警報」の発令を防災無線で放送、高台などへの避難を呼び掛けたほか、同市の公式LINEでも情報発信するなどした。

 同市名瀬では奄美署員らが金久中近くのあかさき公園登り口や平田町のループ橋登り口、平松町の大浜登り口の3カ所で交通整理を実施、高台へ向かう車の交通渋滞防止などの対応を行った。

 午前9時39分~同49分にかけ最大津波が到達、その後、津波の恐れがなくなったことから同50分に警報を解除した。市役所では午前10時と同11時の2回、災害対策本部会議を実施。幹部職員らがそれぞれの部署の職員の安否などを確認、被害状況などを報告した。

 同市名瀬大熊地区では、住民ら約150人が参加。集落内の高台(海抜約10㍍)にある「ふぶくろ公園」に避難した。大熊町内会の畑秀義会長(69)は、小学生の時にチリ沖地震(1960年)を経験したこともあり、「津波の恐ろしさは身をもって知っている。できるだけ早く、高台に避難することを意識して参加した。日頃から訓練を通して、防災意識を高めていくことは大事」と話し、白井ヒデノさん(74)も「1年前の避難時は、パニックになりかけた。日頃から訓練を繰り返すことで、万が一の時に冷静に避難できるようにしたい」と話した。 

 訓練後、安田市長は「昨年の教訓を忘れることなく、確認しながら訓練を行った。津波などの自然災害はいつ起こるか分からない。訓練で見つかった課題を洗い出し、さらなる防災強化に生かしていきたい」と話した。