ノネコ捕獲わなで2匹犠牲に

徳之島町北部の林道「山クビリ線」。世界自然遺産核心部と奄美群島国立公園・特別保護地区が重なる重要エリアだ(いずれも資料写真)


ノネコ捕獲用に山間部に仕掛けている「箱わな」(資料写真)

徳之島北部の林道 国天然記念物アマミノクロウサギ
前代未聞 環境省「管理不足だった」

 【徳之島】世界自然遺産と奄美群島国立公園(特別保護地区)のコアエリアが重なる徳之島北部の林道で、野生化した猫(ノネコ)の捕獲用に環境省が設置委託している箱わなに、国指定特別天然記念物アマミノクロウサギ2匹が入り込み、死んでいたことが8日までに分かった。住民の通報で同省が1月17日に確認。既に1カ月以上が経過したとみられ、同省は業者の「管理不足だった」と陳謝した。
 環境省や関係者らによると、現場は徳之島町山―花徳―轟木地区にかけた同町林道「山クビリ線」(全長約12㌔)の花徳地内付近。クロウサギなど希少種の交通事故や盗掘・盗採防止に―と2019年7月、入口ゲート3カ所の鉄製ゲートを施錠。エコツアーガイド同行者や地元関係者以外は立ち入れないルートとなっている。

 環境省によると1月17日、住民からの通報で同省徳之島管理官事務所の職員らが確認。既に骨と皮だけのミイラ状態になったクロウサギが、扉が閉まった2個の鉄製箱わなの中でそれぞれ1体ずつあった。クロウサギなど希少野生生物を守るノネコ用の捕獲わなで、クロウサギ自体が犠牲になるのは前代未聞のこと。

 同省は同島内の山間部におけるノネコ捕獲事業をNPO団体に委託実施している。同受託団体は山クビリ林道では箱わな3個を設置。中に仕掛けたエサにノネコなど動物が触れると扉がしまるシステム。同団体は同省が「ネコ業務」で島内23カに設置している自動撮影カメラの週1回ペースの点検巡回と併せて、ネコの姿を捉えたポイントを重点にわなを起動させているという。

 今回の事態に同省は「公表を避けていたわけではない。地元の関係機関と事実関係を調べるために遅れた」。てん末には「林道のがけ崩れなどもあって、管理が徹底できていなかったために起きた事故であり、再発防止に体制を整えたい。地域の皆さんにはご心配・ご迷惑をお掛けしました」と陳謝。

 8日朝の一部報道で初め知ったという徳之島町の自然保護担当者は「関係機関からの情報を整理して対策を考えたい。町ではノラネコ対策で同様に捕獲箱を(人里に)設置しており、点検の徹底など注意を喚起したい。情報の連携がなかったのは残念」とも。

 同受託団体の理事長(70)は「我々としてもクロウサギの保護に取り組んでいる最中に起こしてしまった事故。誠に遺憾であり、申し訳なく思っている。林道の大規模なのり面崩落(通行止め)と、支線う回路は悪路ということもあり確認不足だった。再発防止に努めます」などと話した。