がん緩和ケア研修会

大島病院で行われた緩和ケア研修会。講義内容は多岐にわたった

コミュニケーション取り方も
医師・看護師ら受講 県立大島病院

 県立大島病院(石神純也病院長)は26日、「緩和ケア研修会」を開いた。医師、看護師、関係者ら40人以上が参加し、がん患者などの痛みを和らげるための投薬治療や放射線治療などを学んだ。がん患者や家族とのコミュニケーションの取り方や精神療法についても時間が割かれた。

 2015年改訂の厚生労働省・健康局長通知で「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の緩和指針」が示されたことに基づくもの。2012年から開かれている。同病院の医師10人と看護師2人が受講。がん疼痛治療薬として推奨されている(神経を遮断し痛みを緩和する)オピオイドをはじめとする鎮痛薬の効果や副作用、改善されない場合の容量の調整、薬剤併用法などが講義された。

 終末期医療と聞くとホスピスなどを連想し、「助からない患者の受け入れ先」というイメージが強いとされている。しかし現在は、ステージが進む前から早期に痛みをコントロールする「病に苦しむ人へのケア」という考え方が世界的潮流になっているという。身体的な痛みだけでなく、患者や家族の精神的な苦痛、仕事に対する不安(社会的苦痛)などを含め、各専門家が連携して緩和ケアにあたる必要性が指摘されている。

 がんや心血管疾患(心臓病)、COPD(慢性呼吸器疾患)の最前線にいる医師が緩和ケアの考え方を理解し、有効な治療法を探るとともに精神面、家族の不安などを含めた〝全人的苦痛〟に寄り添うことを求めたのが改訂・健康局長通知の狙い。

 講義した鹿児島厚生連病院、坂元昭彦消化器外科部長は、「死にたい」と言う患者に臨床医はどう対応するか▽絶対的な上限のないオピオイドの投与量を、患者の状態に合わせてどう調整(タイトレーション)するか▽オピオイド投与患者の多くにみられる副作用、便秘には特効薬といえる拮抗薬がある―など多岐にわたって話した。

 薬剤の説明では、腎障害を起こす可能性のあるモルヒネ(ケシの実由来の鎮痛剤)から、副作用の出にくい半合成オピオイドへの選択オプション▽フェンタニルの経皮型貼付剤は副作用の発現は低いが、眠っている時間も血中濃度が上がり続けるため注意が必要―など、投与の増量幅や副作用の対応など具体的な数字が示された。

 午後には、国民健康保険大和診療所の小川信所長と大島郡医師会病院の社会福祉士らを招いて、自宅療養を想定したワークショップも行われた。参加した研修医、松尾ももさん(25)は、「患者とのコミュニケーションのとり方など、医師という立場になり、より難しく感じた。気持ちをくみ取れる医師になりたい」と話した。産婦人科志望の鴻上(こうかみ)奈央さん(31)は、「網羅的に教えてもらういい機会になった。医師として役割をどう担うか考えさせられた」と話した。