新緑のグラデーション

世界自然遺産の生物多様性を育み、芽吹きの新緑グラデーションを広げている森=27日、天城町西阿木名(三京)

生物多様性育み
「うりずん」の季節

 〇…世界自然遺産を含む奄美群島では、希少な絶滅危惧種など生物多様性を育む常緑広葉樹林(照葉樹林)の森が鮮やかな新緑のグラデーションを頂きへと広げつつある。南西諸島では「うりずん」とも称され、芽吹きと大地豊穣、人にとっても最も過ごしやすい季節の到来だ。

 〇…徳之島町亀津方面から同島の最高峰井之川岳(645㍍)や剥岳(382㍍)の常緑広葉樹林をぬって天城町方面に至る〝やまなみライン〟「徳之島トンネル・ルート」(両町道)。春霞の中にも久々に快晴が広がった27日午後、深緑と鮮やかな黄緑色の〝迷彩色〟の帯を一掃際立たせていた。

 〇…亜熱帯海洋性気候が育んだ〝新緑のグラデーション〟。主はスダジイ(イタジイ)を中心に、イジュやイスノキ、オキナワウラジロガシなど。種の組み合わせが原生林に極めて近いとされる種の組み合わせは、特別天然記念物のアマミノクロウサギやケナガネズミなど、世界自然遺産を構成する希少な生物多様性を育んでいる。

 〇…「私たちも、水清く美しい緑の島を永遠に保つために、進取の気勢をもって慎重な配慮が必要な時期に当面していることを認識しなければならない」。元伊仙町歴史民俗資料館長の義憲和氏(今月19日死去、享年93)は、1978(昭和53)年発行の伊仙町誌上でも既に警鐘を鳴らしていた。