タクシー台数減少続く

奄美大島ではタクシー台数の減少が続く(資料写真)

3月末で閉業事業者も 運転手の高齢化、人材不足深刻
「低賃金で魅力ない」

 奄美大島でタクシーの台数減少が続いている。奄美市内では主要タクシー会社1社が3月末で事業を終了することにしており、20年ほど前には13社あったタクシー会社が、6社に減ることになる。島内のタクシー台数も2008年の約400台から100台ほどにまで減少する見通しだ。運転手の高齢化や新型コロナウイルスの影響による利用者の減少、ガソリン価格の高騰など、業界を取り巻く環境は厳しさを増しており、タクシー運転手からは「低賃金で魅力がないため、若い世代の担い手がいない」と厳しい声が聞こえてくる。

 奄美市によると、市内のタクシー台数は17年度191台、18年度180台、19年度149台、20年度146台、21年度137台と年々減少。市内のタクシー台数のピークは08年の262台で、15年間で約半数に減った。

 台数の減少について、市内のタクシー会社の関係者は「運転手不足で、車両はあっても乗務できる運転手がいない。ベテランの乗務員の高齢化が進む一方、新たな乗務員を求めても、若い世代のなり手がいない」と話す。

 タクシー運転手の多くは歩合制で、運賃収入が減ると収入も減ることになる。コロナ禍で観光客が減少、同市名瀬の繁華街・屋仁川通りでは、飲食店の時短営業や休業などが相次ぎ乗客も大幅に減った。

 20年以上、タクシー運転をしているという男性(65)は「コロナ禍前は観光客や市外からの利用者も多く、一回の乗車で5千円以上稼ぐ時もあったが、今は千円あればいい方」と肩を落とす。

 島内の初乗り運賃は現在520円で、県本土(640円)より120円安い。関係者は「運転手の賃金を上げるには、運賃を引き上げる必要があるが、利用者が減る可能性が大きい。公共交通の役割もあり、高齢利用者への影響なども考えると簡単に値上げもできない」と話す。

 タクシー運転手に必要な2種免許を島内で取得できない環境も、運転手不足に拍車をかけている。奄美市などは、資格取得にかかる費用の一部を助成する制度を行っているが、タクシー会社関係者は「島外に出てまで2種免許取得を目指す人は少ない。島内で取得できる環境があれば、もう少し人材が育つのだが」と話す。

 新型コロナの影響が小さくなり、観光客も増加傾向にある。今後、タクシーの需要が増える可能性もあるが、台数減少により、利用者への影響も懸念される。

 業界関係者は「企業努力だけでどうしようもない。行政などによる支援や対策が必要」と訴えた。