ザトウクジラ頭数

奄美大島周辺海域で観察できるザトウクジラ(資料写真)

出現微減も親子は過去最多
スイム参加 多く持続化へルール改訂
奄美大島周辺海域 繁殖環境保全へ

 奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)は20日、2023年シーズン(1~3月)の奄美大島周辺海域でのザトウクジラ出現状況(12~4月分を含む)をまとめ公表した。出現頭数(4月17日現在)は997群1696頭で、昨シーズン比95・9%となり微減(71頭減少)したが、群構成では親子の母仔群が過去最多の204群出現、全体の20・4%を占めた。

 調査結果によると、今シーズンの初出現は22年11月24日の大和村沖。1月上旬から出現が多くなり、来遊のピークは2月下旬だった。1月と2月は南下群が多く、3月は北上群が多くみられた。1群の平均頭数は1・7頭。

 今シーズンから全域での発見位置情報を集積。それによりザトウクジラは、▽奄美大島を島沿いに移動▽南部島嶼(とうしょ)部で滞留群が多い▽喜界島と行き来している群れも多くみられる―ことが明らかになった。個体識別調査では、尾びれID写真が395頭分(速報値)得られ、今後、「摂餌海域を含む北太平洋全域での照合に活用する予定」(興会長)という。

 同協会には奄美大島14、徳之島1の15事業者が加盟しているが、奄美大島での今シーズンホエールウォッチング参加者数は14事業者の合計で6309人。21年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で減少したが、利用者は年々増加、今シーズンは作シーズン比27・2%増と過去最多に。また、利用者のうち3481人(55・2%)はホエールスイム参加者が占め、繰り返しのリピーターがスイムは多く人気の高さが示された。

 こうした中、今シーズンからホエールスイムによる影響評価調査も開始。198群(全体の19・9%)の群れでスイムをしたことや、特に休息や授乳時間が必要な母仔群が98群(スイム全体の49・5%)と比率が高かったことから、今月3日にあった協会の総会(オンライン方式も取り入れ全加盟事業者参加)ではスイムルールを改訂。母仔群にストレスを与えることがないよう、スイム回数制限を決めた。具体的には一つの母仔群2回までの制限を検討、来シーズン前の総会で最終決定する。

 興会長は「ホエールウォッチングは、年々ツアー参加者が増えるなど奄美の冬場観光の目玉として期待されている。ザトウクジラが観察できなければ魅力が失われるだけに、クジラにとっていい環境を持続しなければならない。そのためにもルールの厳守が必要。ツアー便乗者にも調査に携わってもらうことで、より保全意識を高めており、ルールを守る意義を浸透させたい」と語った。今後はスイムを実施した識別個体の回帰率なども調査、中長期的なモニタリングを継続し、繁殖環境の保全に努めていく。