徳之島町から学ぶへき地・離島教育の魅力

徳之島町尾母小中で公開された「遠隔合同授業」(小学3・4年の複式学級)と刊行書籍=21日午前

「学校力が向上する遠隔合同授業」
北海道教育大監修・刊行 授業公開も

 【徳之島】2014年度から「ICT(情報通信技術)の利活用による少人数・複式学級授業改善」に着手して「遠隔合同授業」を定着させている徳之島町。その先駆的取り組みに注目した北海道教育大学へき地・小規模校教育センター監修の『学力が向上する遠隔合同授業―徳之島町から学ぶへき地・離島教育の魅力―』(教育出版)が刊行された。同町立尾母小中学校では21日、同遠隔授業のもようも公開された。

 徳之島町では10年前に同町立母間小から児童1人端末のICT利活用授業を実践。翌15年度からは県ICT研究協力校および文部科学省「人口減少社会におけるICTの利活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」協力校を3年間推進。同町内の花徳小・山小・手々小を含む北部地区4校の複式学級間「遠隔合同授業」に進展。合同修学旅行や遠足など交流にも発展。その後、尾母小も参加。国内初の同手法は「徳之島型モデル」と注目され始めたという。

 南北600㌔にわたる鹿児島県の教育の大きな柱の一つは、へき地・小規模校の教育活動の充実。へき地指定校が小・中の義務教育校の約40%と、北海道に続いて全国2位、複式学級の割合は本県が全国1位。徳之島町は小学校63%(県44%)、中学校50%(同13%)に上っている。

 「徳之島型モデル」を集成・評価した同書(A5判・182㌻、本体2600円)の編者は、14年当時に母間小校長だった福宏人徳之島町教育長(同町山出身)をはじめ、北海道教育大札幌校の前田賢次准教授ら4氏。著者は3氏、コラム執筆7氏(5小学校代表)。

 北海道教育大へき地・小規模校教育センターの玉井康之所長は巻頭言「―へき地・離島の遠隔合同授業の可能性と発展条件―」の中で、「多くの自治体・学校ではプロジェクトが終了したり、担当教諭が転勤すると継続しないケースも。徳之島町では遠隔合同授業を継続的に実践。へき地・離島教育の新たな可能性を広げる全国の先駆的なモデルとなっている」とも強調する。

 序章「遠隔合同授業の理念と学校力の発展条件」に続き、▽1章「最先端のICT遠隔合同授業の導入と徳之島町の挑戦」▽2章「へき地教育の基本特性を活かした遠隔合同授業と極小規模校の学校力向上」▽3章「最先端の教育『徳之島型モデル』のICT活用と環境整備」―など計8章で構成。

 学校現場(コラム)からは、「子どもたちは初めからクラスメイトだったように仲良く、冗談を言い合えるように変容。教師集団にも多くのメリットが。極小規模校の児童・教師双方の視野を広げるため、多くの学校で遠隔合同授業が展開されることを願っている」。「遠隔合同授業の魅力は、学校間の連携で子どもたちの学びが保障されるだけにとどまらず、子ども同士の交流・友情が生まれ、職員相互の交流・指導力の向上が図られ、学校力の高まりにもつながる」など報告も。

 編者の1人・福教育長(63)は「本町は親子留学の受け入れも検討。離島へき地・世界自然遺産の自然体験に加え、離島の小規模校にあっても最先端のICT利活用の教育例も紹介した。GIGAスクール(1人1端末)の時代の中、離島へき地の閉鎖性やハンデを越えて、いつでも世界とつながるグローバルな取り組みを今後もどんどん進めたい」と話した。

 尾母小での手々小との遠隔合同授業公開には、北海道新聞社も来島取材した。